辞令交付式での挨拶の要点
毎年春には大きな人事異動が行われる。今年は令和4年4月1日に当院職員の辞令交付式が行われた。辞令交付者は88名であり、コロナ禍のため4グループに分けて行った。1グループは医師の昇任、異動13名、2グループは医師の新規採用25名、3グループは医師以外の昇任、異動で看護師12名、薬剤師5名、事務職3名、4グループは新卒の医師以外の新規採用で看護師27名、その他薬剤師、放射線技師、検査技師それぞれ1名の計30名であった。会場にはこれから共に仕事をしていくうえに大切な当院の基本理念、5つの基本方針、倫理指針の文言をスライドで提示した。各グループ参加者の立場、役割、実力、実績に応じて適切な内容の挨拶を行った。Aグループは理事、副院長、主任医療部長と病院の幹部である。彼らの所属の診療科の立場と役割について客観的に評価して、病院の管理、運営の発展のために尽す。Bグループは主任医長、医療部長の立場から彼らの専門診療科の充実、他科とのチーム医療が円滑、円満に行われるように尽す。なお他施設からの赴任者は当院の規則、方針に従って診療、行動する。Cグループは研修医、若手医師、医長の立場と役割として各科専門医師を目指して医療一般と専門の知識と技術そして医療態度を修得する。医師以外の職種には彼らの領域の知識、技術および医療態度を磨くだけでなく、彼らの専門部門の実情を他の部門の人達に伝え、連携をとる。そして患者に喜ばれ、信頼されるチーム医療を行う。患者・家族から病院の評価が最も高いのは医療の現場で職員達のチーム医療が円滑、円満に実施されることである。
私が重要視しているのは新卒の新規採用者への対応である。彼らに必要なことは自分の言動に責任、明るく・素直で・前向きな態度、一人で悩まず周囲に相談、失敗を恐れず失敗から学ぶ、謙虚・感謝・貢献の気持ちをもつ心構えである。彼らが立派な医療者になるようにわかりやすく、具体的な例を上げて話しをすることが大切である。
さて、新卒の新規採用の皆さん方はこれから社会人として、医療人として、専門職として医学・医療のプロの道をしっかり歩んでいくことになる。その過程において多くの人達、出来事との出会いがあり、そこからプロとして必要なことを学ぶことになる。
そこで皆さんに同年代の大リーガー大谷翔平選手のプロとして生きていく心構えについての要点をお話する。
- 彼はまず強調したことは自分の職業として大好きな野球を選べたことが幸運である。少しくらい辛い目にあってもそれを乗り越える自信がある。
- 試合に勝つ、成績を上げて評価されることは楽しく、プロとして生きがいである。そのことをチームメートだけでなく、ファンも喜んでくれることが最も楽しく、幸せである。
- 自分が今の状況になれたのは少年野球の監督であった父親から野球をしていくうえに大切な心掛けを3つ学び、それを今でも実践している。
その1つ目は、一生懸命に声を出す。声を出すことで集中力が増すし、自分、およびチームメートに自分の存在、考えを伝えること、勇気、やる気をおこさせることができる。そしてチーム内のモチベーションが盛り上がる。
2つ目は、一生懸命キャッチボールをする。キャッチボールの基本は相手のことを思いやって、安全、確実に受けるように球を投げることである。キャッチボールをしていると自分の心身の緊張もほぐれ、相手の気持ちや体調がわかるようになる。そして円滑なコミュニケーションが築かれることがチームプレーに役立つ。
3つ目は、一生懸命走ることである。走ることは野球をするうえで基本的な行動である。走ることで動作が敏捷になり、守備範囲が広がる。足が速いとヒットも出せるし、塁に出ても活躍でき、得点に結びつき、チームの勝利に貢献できる。 - 彼の実績を上げる心構えは、目的達成のため頑張ることである。一生懸命に取り組むことで自分の非力、弱点がわかり、それを乗り越えるために頑張ることになる。この頑張る意味は目標を立ててそれを成し遂げるため力を尽す。そして地道に持続して実行するパフォーマンスが彼の特徴である。
このようにプロとして活躍し、成長する要点は自分の立場、役割をよく弁えて、モチベーション、コミュニケーション、パフォーマンスの行動を高める努力を継続することである。
この大谷選手の話しの内容は医学・医療を実践していく皆さん方に大いに役立つものと確信する。
皆さんの健康と頑張り、そして幸運にめぐり合うことを願っている。