地域医療支援病院
地域医療支援病院とは
日頃の診療は「かかりつけ医」が担い、専門的な診療は「基幹的な病院」が担うことで医療の役割分担を行います。さらに、それぞれが連携することで、住み慣れた場所で行き届いた治療ができる体制を目指しています。
この基幹的な病院が、都道府県知事から承認を受けた地域医療支援病院です。
当院の役割
当院は「がん」「脳・神経疾患」「心・血管疾患」「認知症疾患」を診療の柱に、30以上の診療科と専門外来を有し、質の高い総合的医療と救急医療を担うことを地域における責務と考えています。
かかりつけ医との役割分担を進め、当院に紹介された患者さんの待ち時間の減少や医師の働き方改革を実現し、結果として地域住民皆さんの効率的な健康管理に寄与することを目指しています。
初診患者さんの外来受診方法が変わります
初めて受診される場合には「かかりつけ医」からの紹介状が原則必要となります。
小樽市立病院の他の診療科を受診されている患者さんも同様です。
原則として紹介制の診療科
消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、眼科、泌尿器科、脳神経外科、心臓血管外科、外科、皮膚科
上記の診療科を受診する際は、原則紹介状をご持参願います。
紹介状をお持ちでない場合は、地域の医療機関をご紹介いたします。
紹介状なしで受診を希望される場合は、選定療養費をご負担いただきます
上記以外の診療科
紹介状がなくても受診可能ですが、紹介状なしで受診を希望される場合は、 選定療養費をご負担いただきます。(小児科、形成外科を受診される場合は、選定療養費の負担はありません。)
選定療養費について
紹介状をお持ちでない初診患者さんは、診療費とは別に初診時の選定療養費として、7,700円(税込み)をご負担していただきます。(再診の場合、3,300円(税込み))
選定療養費の対象外
下記に該当する場合は、選定療養費の対象外となりますので、紹介状がなくても選定療養費の負担はありません。
- 院内紹介された患者
- 特定健診、がん検診等で要精密検査とされ検診結果を持参した患者
- 救急車・ドクターヘリ等で搬送された患者
- 時間内に緊急やむを得ないと医師が判断した患者又は緊急で時間外・休日・深夜に来院した患者
- 即日入院となった患者
- HIV感染者
- 手話通訳を必要とする患者
- 治験協力者である患者
- 災害により被害を受けた患者
- 労災・公災・自賠責保険で受診する患者
- 健康保険を使用せず全額自費で受診する患者(保険証忘れは除く)
- 生活保護法の医療扶助の対象となっている方
- 公費負担医療制度の受給対象患者(当院で使用されている公費を抜粋)
*感染症法による一般患者に対する医療
*障害者総合支援法による更生医療*被爆者の一般疾病に対する医療の給付
*障害者総合支援法による精神通院医療(自立支援)
*中国残留邦人
*肝炎治療特別促進事業に係る医療の給付
*特定疾患治療費及び先天性血液凝固因子障害治療費
*小児慢性特定疾患*指定難病
*児童福祉施設措置医療*重度心身障害者
*こども医療受給者*ひとり親医療受給者
地域医療支援病院承認と目指した背景
小樽市は、毎年約2,000人の人口減少が見込まれており、その減少率は全国10万人以上の都市の第1位となっています。生産年齢人口(15~64歳)については、北海道全体よりも早い2040年には老年人口(65歳以上)を下回ることが見込まれており、令和5年の高齢者比率は41.7%でした。
医療従事者の高齢化も例外ではありません。道内の医療施設従事者の平均年齢は51.92歳と、全国より1.32歳高いのみならず後志圏内は54.81歳と道内医療圏で第4位でした。若い医療従事者が少なく、高齢の患者が多い中、救急搬送件数は全世代にわたり右肩上がりに増えており、高齢の救急患者を、誰が、どこで、どのように診るのか、現在、小樽市医師会などが中心となり活発に議論されています。
医療者側は高齢化だけではなく、医師の偏在(地域、診療科)、働き方の改革など是正しなければならない難題を多く抱えています。
日本の医療制度は安心して医療を受けられるように国民全員が公的医療保険に加入し、一人ひとりが保険料を出し合い、助け合うことによって支えられています(国民皆保険)。患者は保険証1枚さえあれば医療機関を自由に選ぶことができ(フリーアクセス)、窓口負担だけで診療や薬の給付など、必要な医療サービスを平等に受けることができる世界一のシステムです。しかし近年、このフリーアクセスの弊害が看過できないほど際立っています。総合病院なら安心という「大病院志向」に偏り、本来専門的な治療や救急医療を担う病院に、比較的軽症の患者が多く訪れ、専門治療や緊急手術を必要とする患者の治療に集中できないという状況に陥っています。それを両方全て受け入れると医師やその他の医療従事者が過重労働となり、なり手不足、偏在といった諸問題が深刻化していきます。私たちの住む小樽後志地方も例外ではなく、限られた医療資源を効率的に活用していかなければ、地域の医療提供体制は維持できなくなくなる恐れがあります。
そのためには、身近で日常の健康状態を管理してくれる「かかりつけ医」を持ち、専門的な治療は、必要に応じて病状に適した医療機関を紹介してもらうという医療の機能分化・連携強化が必要です。しかし、これまで当地域における医療の機能分化・連携強化は遅々として進まなかったのも事実です。そこで当院は、地域の医療を守る制度の基幹となる『地域医療支援病院』を目指し、外来、入院、手術の待ち時間を短縮し、多くの住民が「必要な時に必要な医療を迅速に提供する」ことを目標に、初診時には紹介状の持参をお願いする紹介制を試行してきました。その結果、この度晴れて「地域医療支援病院」として北海道知事の承認を受けることが出来ました。北海道の自治体病院としては4番目、小樽後志地区で初めての承認となります。これを機に小樽後志地域の各医療機関の機能分化を促し、連携強化を図ることでこの危機を乗り越えるべく強いリーダーシップ、決意をもって臨む所存です。
小樽市立病院 院長 有村 佳昭