前立腺がんのお話~特にPSA検査~

 

小樽市立病院 院長 信野  祐一郎  (泌尿器科)

病院広報誌「絆」vol.32 特集「検査のススメ~自覚症状のない大病の早期発見」より(2020年3月発行)

 前立腺は男性にしかない臓器で、膀胱の出口のところにあるくるみ大くらいの臓器です。その働きは男性ホルモンに依存しています。前立腺は精液の一部である前立腺液を分泌して精子の運動・保護に関与しています。部位から三つの領域に分類され外側の辺縁領域からがんができやすいとされています。

 前立腺がんは高齢男性に多いがんで、進行はさまざまではあるものの比較的ゆっくりしたものが多いとされています。ただし、タイプによっては早くから骨に転移するものもあり注意を要します。早期であれば手術や放射線治療により根治が可能で、進行がんでも男性ホルモンに依存しているため、いわゆるホルモン療法(内分泌療法)がある程度有効です。

 前立腺がんは、早期のうちはがん特有の症状はありません。むしろ合併している前立腺肥大症による排尿困難、頻尿、残尿感が主体となります。しかし、がんが進行して腫瘍が尿道や膀胱を圧迫するようになると、がんによる同様の症状が出現します。さらに進行すると、がんが骨に転移して、腰痛や四肢痛などが現れるようになります。特に前立腺がんは、骨やリンパ節に転移しやすい性質があります。

 前立腺がんの検査と診断の流れは、スクリーニング検査→確定診断→病期診断の3段階に分けられます。

 スクリーニングとは、前立腺がんの疑いがある人を見つけだすための検査をいいます。血液検査法によるPSA検査、直腸診、超音波検査を行い、異常が認められた場合は、がんを確定するための前立腺生検を行います。

 前立腺がんのスクリーニング検査の中で、最も簡便で精度が高く、血液検査だけで分かるのがPSA検査です。 PSAとは「前立腺」「特異」「抗原」の英語の頭文字をとったもので、前立腺でつくられるタンパク質の一種です。PSAは、健康なときも血液中に存在しますが、前立腺がんが発症すると大量のPSAが血液中に流れ出すことから、前立腺がんの腫瘍マーカーとして広く普及しています。当院ではプチ健診でも「前立腺が気になる方」と題してPSA検査を実施しており、券売機で購入後受付をして採血して帰宅し後日結果が届くという方法をとっています。

 スクリーニング検査で異常があった場合、確定診断には前立腺生検が行われ、がん細胞が認められた場合は、病期診断に進みます。病期診断とは、がんがどの程度広がっているかを確認するための検査で、CTやMRI、骨シンチグラフィなどの画像検査でがんの進行度を確認します。周囲への浸潤の有無やリンパ節や骨、他臓器への転移の有無を調べ、これらの結果から治療法が決定されます。

 前立腺がんの治療は、「手術療法」、「放射線療法」、「内分泌療法」が治療の柱となります。

 局所的治療である「手術療法」と「放射線療法」は、根治を目指す治療に位置付けられています。 全身的治療には、「内分泌療法」と「その他の治療」があり、「内分泌療法」は、がんの増殖や進展を抑制する全身的な治療です。病期を問わず多くの患者さんに有効で、手術や注射、飲み薬などさまざまな種類があります。

 治療法を決めるためには、がんの病期や悪性度などが大変重要な要素となります。また、年齢や全身状態、合併症の有無なども、治療法の選択に大きな影響を与えます。治療方針は、これらの状態と患者さんの希望を考慮して決められます。

問い合わせ先:小樽市立病院 泌尿器科外来 TEL 0134(25)1211 内線1235

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