女性の健康・いきいきライフ

シリーズ2 よくある女性の病気 子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症 

小樽市立病院 女性医療センター

はじめに

 シリーズ第2回の今回は成人女性によく見られる病気のうち、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症についてお話しします。まずしばしば女性を悩ませる症状について、その用語と内容の解説をします。

婦人科疾患で見られる症状

  • 過多月経:生理期間における出血(月経量)が異常に多いもの。量で表すと140ml以上のものです。他人とは比較できないので自分では普通だと思っていても実際には過多月経になっている女性も多いのです。1時間おきに大きなパッドを交換しなければならない場合や血液の塊がある場合には多いと考えます。月経量が多いと血液中の鉄分が失われるので血が薄くなり、鉄欠乏性貧血となります。
  • 過長月経:生理の期間が8日以上続く場合を指します。生理の期間は通常3〜7日であり、10日〜2週間以上続く場合には何らかの原因があると考えて産婦人科で診てもらう必要があります。
  • 月経痛:生理の時に月経血は子宮から排出されますが、この時に子宮が収縮するため生理の直前から生理中に下腹部痛や腰痛が起こります。軽い生理痛は異常ではありません。卵巣から排卵が起こり正常なリズムで女性ホルモンが分泌されて子宮に作用していることを示しています。
  • 月経困難症:日常生活に支障をきたすほど下腹痛・腰痛や頭痛、胃痛、吐き気、めまいなどの症状が強いものを指します。QoL(生活の質)の低下をもたらすので何らかの治療が必要です。原因となる病気があるかどうかについて産婦人科で診てもらう必要があります。

子宮筋腫

 子宮には子宮体部と子宮頸部があります。体部はニワトリの卵くらいの大きさで、妊娠すると赤ちゃんは体部で発育し、体部はそれにつれて大きくなります。頸部は体部と腟をつないでいる部分であり、妊娠が進んで出産に至るまで流産・早産が起こらないようにしっかりと体部を支えて閉じています。子宮筋腫は子宮体部や頸部に発生する良性の腫瘍です。良性というのは周囲の組織・臓器を損壊したり他臓器に転移して命を脅かすことがないということです。子宮筋腫があるからといってすぐに治療が必要な訳ではありません。子宮筋腫は30歳以上の女性の20〜30%に認められます。日常生活に支障があるような症状があるときに治療が必要となります。子宮筋腫は女性ホルモンの影響を受けており、閉経後は一般的に小さくなります。閉経後に大きくなるものは良性の筋腫ではない可能性があります。

症状

 過多月経と月経困難症が代表的な症状です。これらの症状は子宮筋腫が発生した部位、大きさに関連します。粘膜下筋腫は子宮に内腔へ向かって突出してくる筋腫で、小さくても高度の過多月経、不正出血、月経困難症といった症状が出ます。筋層内筋腫は小さいものでは無症状ですが、大きくなると過多月経、不正出血、流産・早産の原因となります。漿膜下筋腫は最も症状が軽く、かなり大きくなるとお腹のしこりの自覚、膀胱の圧迫症状などが出ます。茎をもって外へ発育した有茎性漿膜下筋腫には茎がねじれて急激に強い腹痛を起こすことがあります。

診断と治療

 婦人科診察と超音波検査を行います。子宮筋腫と区別しなければならない病気に子宮肉腫があります。子宮肉腫は悪性腫瘍であり、急に大きくなった場合や閉経後に大きくなってくる場合には子宮肉腫の疑いがあります。その場合にはMRI検査を行うことがあります。子宮筋腫と子宮肉腫の中間的な性格をもった腫瘍もあり、診断がまぎらわしい場合もあります。

 治療は将来子供が欲しい人や子宮を残す希望が強い人では筋腫だけをとる手術(子宮筋腫核出術)を行います。筋腫だけをとる手術では筋腫の個数や大きさによっては出血が多くなることがあります。また術前検査で良性だと考えて筋腫核出術手術を行い、術後の顕微鏡検査で悪性であることが判明する場合もあります。また、手術時にはわからなかった小さな筋腫がやがて増大して、再度の手術が必要となることもあります。

 薬で卵巣の働きを抑えて筋腫を小さくしたり、月経を止めて症状を改善する方法もあります。この治療法では女性ホルモンの分泌が抑えられるので更年期様の症状がでたり、長期間では骨量が減少するので半年以上の長期使用はできません。筋腫核出術前に筋腫を小さくする目的で用いられることもあります。閉経間近の女性では手術をせずに治療する目的で逃げ込み療法として用いられることもあります。

 手術は腹腔鏡による子宮筋腫核出術あるいは子宮全摘術が行われます。腹腔鏡下手術では開腹手術よりも術後の痛みが少なく回復が早いのが特徴です。

子宮腺筋症

 子宮体部の内側には子宮内膜という粘膜があります。子宮内膜は卵巣からの女性ホルモンの働きにより周期的に厚さやその性状を変化させ、子宮体部から剥がれて血液とともに排出され生理となります。この子宮内膜の類似組織が子宮体部の筋層内で増える病気が子宮腺筋症であり、子宮筋腫よりも頻度は少ないです。多くの場合、子宮体部全体が腫れて大きくなりますが、局部的にしこりのようになることもあります。外来での診断において超音波検査を行いますが子宮筋腫との区別が難しいこともあり、治療方針決定のためにMRI検査が行われることもあります。

症状

月経困難症、過多月経、貧血症状などで、痛みはかなり強いことがあります。生理期間以外にも下腹痛(骨盤痛)を起こすことがあります。

診断と治療

子宮全摘術が標準的な治療法です。手術をせずに薬物で症状を抑える目的で鎮痛剤やホルモン療法が行われます。

 

子宮内膜症

 子宮内膜に似た組織がなんらかの原因で卵巣など子宮外で発生して増える病気です。10人に1人に認められるとされています。20〜30代の女性で発症することが多く、30〜34歳にピークがあります。子宮内膜症は女性ホルモンの影響で増殖し、その部位で出血を起こし、周囲組織と癒着を起こして痛みを起こしたり、不妊の原因となります。子宮内膜症は不妊を訴える女性の20-50%に、慢性的に骨盤の痛みを訴える女性の7-8割に認められます。

 卵巣にできた子宮内膜症では卵巣に旧い血液がたまったチョコレート囊胞ができます。これ自体は悪性ではありませんが、100人に1人弱(0.72%)の頻度で癌化することが報告されています。癌化のリスクは年齢と大きさに関係しますが、小さなものでも癌化することがありますので定期的に検査を受けることが必要です。

症状

痛みと不妊が子宮内膜症の代表的な症状です。生理痛の特徴は月経開始の1-2日前から始まること、排便痛や性交痛を伴うことです。痛みは年々増強する傾向があります。月経時以外にも腰痛や下腹痛といった慢性骨盤痛と呼ばれる状態の原因となります。

診断と治療

症状を和らげること、病巣を縮小させることが治療の目的となります。初期の子宮内膜症は肉眼でかろうじて見えるような小さな病巣なので腹腔鏡による検査でなければ確認できません。実際には症状と診察所見から診断されます。診察が困難な場合にはMRIが行われることもあります。月経困難症の治療には始めに鎮痛剤(非ステロイド性消炎鎮痛薬)が用いられ有効なことがあります。内分泌療法としては、エストロゲンとプロゲスチンの合剤(LEP製剤)、プロゲスチン製剤、GnRHアゴニストと呼ばれる薬などがあります。どれが最も適しているかは産婦人科で相談して下さい。

不妊を訴える方では、その原因を探るためには腹腔鏡で検査を行います。子宮内膜症は若い女性に多い病気なので、手術はチョコレート囊胞の核出術と癒着剥離術が行われます。手術には内分泌療法を組み合わせて行われることもあります。悪性化が疑われた場合には卵巣摘出術が行われます。

女性の健康・いきいきライフ  今後の予定

No. 1 女性のライフステージとヘルスケア

No. 2 よくある女性の病気 – 子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症

No. 3 思春期から始まる健康管理 – プレコンセプションケア

No. 4 性感染症の予防と治療

No. 5 骨盤臓器脱(POP)の最近の手術治療

No. 6 婦人科がんの最新治療

No. 7 女性のがんの予防

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