女性の健康・いきいきライフ

シリーズ1 女性のライフステージとヘルスケア

小樽市立病院 女性医療センター
※小樽市立病院広報誌「絆」2021年6月号掲載記事

はじめに

健康な生活を送ることは誰もの願いです。小樽市立病院女性医療センターでは「女性の病気の予防、早期発見、エビデンス( 医学的根拠)に基づいた治療」を行っています。
治療は予防とのバランスが大切です。シリーズ第1回の今回は、女性の更年期から閉経後の時期における病気の予防の大切さを中心にお話しします。
閉経になることと女性の健康との間には深い関わりがあります。

1.卵巣の働き

卵巣は子宮の左右両側にあり、二つの重要な働きをしています。一つは卵巣から毎月1個の卵子が排卵されることです。卵子は卵管の中で受精して受精卵になり、さらに子宮に運ばれて子宮内膜という柔らかい組織に包まれて妊娠が成立します。もう一つの働きは、女性ホルモンの分泌です。卵子は一つ一つ小さな袋にくるまれています。この袋を構成する細胞で男性ホルモンから女性ホルモンのエストロゲンが作られます。男性ホルモンはコレステロールから作られますのでコレステロール自身は大切な栄養素です。
※善玉コレステロール、悪玉コレステロールについてはシリーズの中で解説する予定です。

2.女性ホルモンの働き

女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲスチン(黄体ホルモン)の二つのホルモンがあります。排卵がきちんとあると、このホルモンのバランスが取れていると言えます。エストロゲンは女性の体の特徴を形作っています。エストロゲンは全身の組織に作用し健康を守る役割があり、骨を丈夫にする働きもあります。骨は卵巣が活発に働く20代、30代に最も強くなります。その他、動脈硬化を防いだり、血管のしなやかさを保ったりする働きがあります。

3.閉経と女性の健康

閉経は、月経(生理)が1年以上ストップしたことを指し、卵子がほとんど無くなったことを意味します。平均すると50~51歳頃に閉経を迎えます。そして更年期は、閉経の前後10年間を指し、45歳〜55歳あたりになります。この時期に卵巣の働きが、低下してきますのでいろいろな更年期症状がでたり、骨が弱くなったり、動脈硬化が始まったりします。女性ホルモンが分泌されなくなると、骨粗しょう症や動脈硬化による心筋梗塞・脳卒中のリスクが高くなってきます。骨盤内の臓器である子宮、膀胱、直腸を支える筋肉・靱帯組織が出産やエストロゲン低下の影響で弱くなるため、下がった臓器が腟から出てくることがあります。これらの予防の観点から、閉経期にはエストロゲンが低下したことによる体への悪影響が出始めていないかどうかをチェックし、定期的に病気の予防へ向けた生活習慣の調整をしたり、必要に応じて薬を使ったりすることが大切です。

4.骨粗しょう症の予防

1) 以下に当てはまる方は骨粗しょう症のリスクが高くなります

 ① 痩せ、極端なダイエット、過度な運動をしている

 ② 偏食(カルシウム不足)の傾向がある

 ③ 運動不足

 ④ 日光にあたっていない

 ⑤ 喫煙している

 ⑥ アルコールを摂取している

 ⑦ 親が大腿骨骨折をしたことがある

 ⑧ ステロイドの治療を受けている

2) 以下に当てはまる方は骨の強さをチェックすることを お勧めします

 ① 更年期症状がある

 ② 50歳以上

 ③ 婦人科の手術後

 ④ 腰痛がある

 ⑤ 1)の骨粗しょう症リスクがある

 ⑥ 乳がんの手術後

5.動脈硬化症の予防

エストロゲンが動脈硬化に対して保護的に働くため、女性では閉経前の動脈硬化は非常に少なく、動脈硬化性疾患は男性の3分の1から4分の1です。しかし50歳以降は女性の動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳卒中)が急速に増加し、70歳代では男女の差がなくなります。

エストロゲンが低下する閉経頃から高コレステロール血症が増加します。内臓脂肪蓄積型肥満などメタボリックシンドロームの増加も関与しています。

動脈硬化症の危険因子は以下のとおりです。

① LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の増加

② HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下

③ 糖尿病

④ 高血圧

⑤ 血管壁の炎症

骨粗しょう症と動脈硬化症の予防には若い時からの生活習慣の見直しと健康管理が大切です。更年期に入る頃には子宮頸がんに加えて子宮体がんや卵巣がんも増えてきますので、がん検診と併せて骨粗しょう症・動脈硬化症予防について産婦人科専門医に相談することをお勧めします。

女性のヘルスケアに関する予防や治療について、かかりつけ医と小樽市立病院は連携して対応しています。

気になる症状がある場合や予防について相談したい場合は、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じて当院への受診希望をお伝えください。

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