令和はじめの年末・年始の局長メッセージ

 小樽市病院局は年末、年始の行事として令和元年12月27日に仕事納め・忘年会そして令和2年1月6日に新年・仕事始めの会を開催した。病院局長の挨拶において職員に局長メッセージを述べた。

1.令和元年仕事納めの局長メッセージ:

私はこの1年を振り返り、社会での出来事、病院での出来事、そして個々人の出来事の中で特に印象に残ったことがある。

1)社会での出来事では、今年は時代が平成から令和に変わり、両天皇と皇后陛下の退位と即位の儀式が厳かに執り行われた。両天皇と皇后は自分の立場、役割をしっかり自覚され、誠実に責任を果された。特に両天皇のお姿には品格と威厳があり、両皇后には気品と優雅さが漂っており、国民の象徴として誠に立派な立ち振る舞いであり感動した。

一方、政治家、官僚、役人そして経済、芸能、スポーツ、さらに医療の世界において不誠実、不信、無責任な言動を行う者や自分の立場、役割を弁えずに自己中心的でかつ公私混同の態度を平気でとる者が相当数いた。彼らの行動には呆れ果て、強い憤りを感じた。彼らのような者は歴史の中で繰り返し見られており、人間の愚かさ、弱さ、高慢さを示すものである。

しかし、そのような行為は誰にでも起こりうるものであることをよく自覚して、日頃から気を付けることが大切である。

2)病院での出来事では病院経営が苦境に陥ったことが今年の最も重大な問題でした。当院では自治体病院に課せられた経営の黒字化を達成するために病床稼働率90%以上を維持することを実施した。

しかし、残念ながらそれを達成していける体制、力量、熱意が不十分であったこと、その状況を私はじめ上層部の見通し、認識、対応が甘かったことにより、その見直しを余儀なくされた。

 その生じた第一の理由は看護師の負担増からマンパワー不足が生じ病床の休床を余儀なくされたことである。それにより職員の診療のモチベーションの低下、病院運営のアクティビティの減少、そして病院経営のペースダウンの悪循環が見られる状況になった。

この難局を乗り越えるにはまずその原因をしっかり分析し、職員全員が日本ラグビーチームのようにワンチームとなってそれぞれの立場、役割をしっかり果し、一丸となって同じ目標に向って邁進していくことである。

組織が強くなるにはそこに所属する個々人の考え、行動および人間関係が重要である。

戦国時代最強の武田家の家訓に「人は石垣、人は城、情は味方、仇は敵」がある。強い国は頑丈な構造物を必要とするのでなく、そこに住む人が大将のもとにしっかりまとまる。他人を思いやる情けが組織をまとめる。そして他人への批判、不平、不満の態度が仇となり組織の結束が乱れる。

 私はこの1年間皆さんに、当院にとって必要な2つの指針を述べてきた。

 一つは病院を取り巻く状況が時代の変化とともに変わっていくのでこれまでのやり方を絶えず見直すこと、病院方針、各部署の連絡や指示を確実に浸透させること、そして現場の状況をしっかり検証して、成果が上がるようよく話し合うこと、そして解決できない問題点を上司に報告、相談することである。

ある医療コンサルトは経営の良い病院では現場への対応を大切にすることで末端の職員までが経営改善に熱心に取り組むと語った。

 もう一つは病院で質の高い、円滑、円満な医療が行なわれるには、職員個々人の経験、実力に相応しい立場、役割を自信を持って果せるように考慮、実現する。すなわち若い人達は自分の診療を通して専門の知識、技術を修得すること、中堅の人はチーム医療を重要視して自分の診療が他の診療科、部門の人達に役立つように努めること、そして病院および各部門の幹部は病院管理者的立場から自分の診療科、部門の仕事を客観的にみて、有益に活用されるように指導することである。

 経営の良い会社は各個人が今自分にできることをスピーディーに実行し、少しでも役立つことに心掛ける。

3)個々人との出来事で、特に印象に残ったのは本年11月に当院の認知症疾患医療センター企画の講演会で群馬県の医療法人理事長の田中志子先生との出会いであった。その時彼女の超多忙な仕事振りと苦労話を聞いた。彼女は「私はこの仕事をして職員や患者から喜ばれるので楽しい。子供達も私の仕事を理解して協力、励ましてくれるので嬉しい。そして地域住民からも私の仕事が認められ喜ばしいのです。」と笑顔で答えた。田中先生の話には楽しい、嬉しい、喜ばしいの明るく、素直で、前向きな言葉が使われており感心した。

人生において成長、成功する要因の割合はその人の能力が10%、努力が30%そして人生を左右する出会い、巡り会いの運と縁が60%であると言われる。

ニトリの会長は今日の立場、状態になれたのは、自分の実力30%、あと70%が自分を支援、協力してくれた人達との人間関係のお蔭である。信じ合える人達と仕事をすると楽しく、前向きな仕事ができると語った。

 プロの職業人に必要なものは勇気、覚悟、実行力である。今年10月に亡くなった国連難民高等弁務官の緒方貞子さんの任務は難民の命を最優先して守ること、直ちに現場に行き、仕事をすること、そして、その現場で必要であれば自分の責任でルールを変えてでも使命を果たすことであった。

私ども医療者は市立病院の職員として地域住民の命を守るために働くことが使命である。そのことをよく認識して、時にはルール、規定を臨機応変に運用して患者のために尽すことである。

現在の当病院職員にとって大切なことは「自らを信じ、仲間を信じて、積極的に仕事に当れば必ず道は開かれる」という教訓を実行する。そして皆さんが自分の隠れた才能に気付き、才能を磨いて有効に活かし、そして意欲的に国内外で活動する。それを地道に継続していくことで医療人として大きく成長すると確信する。

 

2.令和2年仕事始めの局長メッセージ:

令和2年は当病院にとって重大な課題を多くかかえている。

私はこれらの課題を理解し、克服するために3つの視点から考え、対応する。それはまず当病院がどのような社会の要請、時代の変化の中にあるのか、次にその中で当病院が克服するにはどのように変化しなければならないのか、そしてその対応の優先順位をどのようにするのかである。

1)厚労省は現在の医療体制をこのまま継続すれば近い将来必ず医療崩壊するとの強い危機感を持っている。それで地域医療構想推進、地域包括ケアシステム構築そして医療者の働き方改革などの改革案を掲げて、その実現のために対策、対応を強力に推し進める。

昨年の9月末に厚労省は突然「地域医療構想にもとづいて再編、統合を検討すべきとして424公立・公的病院」の実名を公表した。これは地域医療現場の実情、要望を適正に配慮して対応しなかったため、医療界からの反発、不信感が大きく現在も混乱を呈している。私は今年の5月末に東京で第12回全国病院事業管理者研修会の当番世話人として「押し寄せる医療提供体制の変革圧力とその対応をめぐって」のテーマで研修会を開催する。今回の件の教訓は相手の事情をよく確認しなければ「正論を言っても相手は正しく受け止めてくれない」のである。このことは我々日常業務や生活においても起きうるので注意が必要である。

2)当病院がこれからも元気よく生き残るためには職員の意識や医療体制が変わらなければならない。そのことが求められる現実的な5つの課題について述べる。

①病院経営、運営の改善改革をもっと具体的に分析し、明解に表示し、円滑に実施する。先日あるコンサルタント会社は当病院の経営内容を診療科別や他病院との経営状況の比較など詳細に分析した。その結果当病院にはまだかなり医療収入を上げられる要因があることが判明した。そこで各診療科の先生方にはその分析内容を早急に明示する。そして担当医師が自分の行った診療内容を診療面からだけでなく経営面からどのように有効に行われているかを知ることはこれからの医師にとって重要である。本年2月に当病院に病院経営コンサルトで著名な世古口先生が講演に来られる。彼は病院の経営の質と診療の質が相関すると述べている。

②今年度から老朽化した高額医療機器(10年以上、1億円以上)の更新を4~5年かけて実施しなければならない。当病院は財政的に厳しい状況にあるが、患者の安全、安心および高度の医療を行うために何とか対応しなければならない。そのため市当局との相談と関係職員との協議により理解、納得のもと行う必要がある。

③経営改善、運営が円滑に行われるために組織体制の改変を行う。有村副院長を中心に進められている4月から現在の地域医療連携室を患者支援センターに変更して、その中にがん相談支援と地域医療連携の2つのグループを設ける。

がん相談支援グループは当病院が地域がん診療連携拠点病院認定を現在申請中であり、小樽・後志二次医療圏の中核病院として対応する。地域医療連携支援グループには入院前支援、予約支援、退院支援・医療相談そして地域連携・広報の4つの担当をおく。それにより患者の入退院が円滑になり、外来、病棟、退院後の患者管理支援および病院経営にも大いに貢献する。

地域連携・広報担当は地域医療に関係する病院、クリニックなどの対応、紹介、逆紹介患者の対策など地域医療支援病院を目指す活動を行う。そして当病院の広報誌、病院誌、ホームページの充実を図る。

④働き方改革検討委員会が活動している。特に医師の働き方改革は働き方の内容、時間外労働の対応、待遇面や環境面の改善などについて、信野病院長を中心に検討が進められる。そこでこれまでの働き方をよく見直し、余裕を持って自分の知識、技術、人間性を磨く体制を整えることが大切である。

⑤病院機能評価認定の更新を目指す活動をする。来年の2月に更新審査を受けるため新谷副院長を中心にその準備、対策に当っている。更新の場合、審査員は現場での適切な対応を重要視する。それで普段から患者の医療の安全、安心そして医療機器、器具と仕事場の整備など質の高い医療が円滑、円満に行われるように心掛ける。

3)物事の対応の優先順位について、最近痛感することがある。それは「組織は人なり」と言われるように人の教育、人材の育成と確保が最も大切であり、優先順位も高いことである。これを重要視する支援の体制作りと費用の提供が必要である。職員には自分を磨き成長させるための学術・学会活動および必要な専門資格の取得に積極的に挑戦することを推奨する。そのことに対して病院として最大限の支援を行う方針である。

さて今年はネズミ年であり、何か世間が騒がしく、せせこましい状況になることが危惧される。一方ネズミは粘り強く動き回る活動力に恵まれ、危機感知力に優れ、環境適応能力に長けている。皆さんにはこのネズミの長所を活用して自分の成長と病院や社会の発展に寄与することを期待する。

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