平成最後の医学生・若手医師に贈るメッセージ

 平成31年4月1日には新元号「令和」の公表という記念すべきことがあり、そして6日には札幌医科大学の新入学生オリエンテーションと麻酔科新入教室員歓迎会において話しをする機会があった。

Ⅰ.新入生に授ける医学生の心得

1.自己紹介:私は1963年に札幌医科大学に入学し、多くの学生仲間、教職員、先輩の人達とすばらしい人間関係に恵まれた。学生仲間とは 気心の知れたよきライバルとなる人間関係、そして教職員とは信頼、尊敬できる人間関係を築いた。教授就任後は学年担当、教務委員長、学生部長として医学生の学業、生活、部活動に対して管理、指導に当たり、さらに保護者との相談、対応に携わった。

2.医学生の目標、立場、役割の意味

1)目標:医師を目指して医学、医療の学習、実習に努め医師免許証を取得する。学生生活、活動を通じて人間力を高める。

2)立場:医師の指導のもと診療に参加できるが医療業務はできない。臨床実習においては医師の倫理観に基づいて行動する。

3)役割:医学生として大学の理念、方針、そして社会のルールに従って、行動する。自分の言動には責任を持ち、大人の対応をする。

3.医学生の抱える課題と対応

1)入学当初の学生はこれまで家庭でも、学校でも与えられたことに対応していたため、自分で客観的に考えて行動する、自分の言動に責任をもつことが難しい。

2)入学後に、これまでの緊張感が切れ、やる気が沸かず、不安定、うつ的な気分に陥ることがある。このような状態を長びかせないために早く信頼できる人に相談する。

3)学生が大学の規定および社会の常識、ルールに違反した場合には厳しい判断が下される。処罰を受けた者は自分だけでなく周囲の者に対しても迷惑を掛ける。特に両親の期待を大きく裏切り、悲しませる。

4)学担や学生部長の時代に時折両親から、子供の学生生活、大学での状況がわからないと相談された。また子供の態度を注意できない、問題を解決できないことに対して対応を依頼された。これは親が子供に対して甘やかし、遠慮していること、一方子供が親に対して感謝、尊敬の配慮に欠けることに因った。その場合子供が両親とのコミュニケーションを図るよう努める。

5)医学生は医師が病気をもった複雑な人間を扱うため単に専門的学問に専念するのでなく、一般教養、基礎的学問を学ぶことの大切さを知る。

6)各学年の進級、卒業、国家試験は認定試験であるので、お互に目標を持って連携、助け合って乗り越える。

4.「人生出会いと思い出づくり」の教訓

1)人が遭遇する出会いには時代、社会、環境、人物、仕事、その他色々な出来事がある。

2)素晴らしい思い出づくりは人に進化、成長、組織に発展、社会に恩恵をもたらす。

3)私の人生で特に貴重な人物との出会いと思い出づくりが重要かつ有意義であった。学生諸君には、これから「人との出会いと思い出づくり」に積極的に取り組むことを期待する。

Ⅱ.新入教室員の歓迎と教室の展望

1.平成31年がまもなく令和元年に変わる年に当教室には14名の新入教室員が入局したことを喜ばしく思う。これから彼らが立派な麻酔科医に成長し、活躍するには、まずお互いによきライバルとして正々堂々と競い合って個々人を成長させること、そしてこの14名の仲間が欠けることなく一丸となって活躍、活動し、強いマンパワーを発揮させることである。

2.現在、時代は大きく変動しており、各分野において組織の改革、人材の新旧交代が盛んに行なわれる。例えば女子フィギュアスケートのスター浅田真央が紀平梨花選手に、将棋の加藤一二三九段が藤井聡太7段に、大相撲の横綱稀勢の里が大関貴景勝に、そして米国プロ野球の大スターイチローが大谷翔平選手にそれぞれの栄光の座を明け渡している。この4名の若者達の共通している性格は明るく、素直で、前向きであり、人が成長し活躍していくために大切である。さらに彼らの仕事に対する態度は目標をしっかり持って取り組む、限界を超える厳しい訓練をする、得られた結果を謙虚に受け止め、反省と次回の戦いの覚悟と準備をする。この態度はプロとして自分の仕事、責任を果して成果を上げるために必須である。彼らの良き性格、仕事に対する厳しい態度は貴重な教訓になる。

3.当教室にも時代変革の波が押し寄せている。今年は山蔭教授が就任10年目を迎え、折り返しの節目の年である。これから後半の10年における教室は強く、勢いのある組織にする。それには強力なリーダー、優秀な人材、働きがいのある良い環境、思いやりのある強い絆の人間関係、周囲から信頼、尊敬される実力、実績など、5つの要因がすべて揃う。また国内外から高い評価を受けるには教室内部の充実と対外的活動のバランスがよくとれている。これらのことが教室の展望を拓くのに重要である。

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