看護学生に対するメッセージ

はじめに

 小樽市立高等看護学院は小樽市病院局の組織機構内にあり、平成27年度から2年間を事情により私が学院長を兼務することになった。学院長の大切な任務は学内の3大行事である入学式、戴帽式、卒業式で式辞を述べることである。学生達は、素直で、敏感で、情熱的な若者達であるので彼らの人生の進路に少しでも有意義で、役立つ内容の式辞を述べることに配慮した。
 入学式では看護の道を目指すためにたえず努力すべき心掛け、戴帽式では看護の道に進むのに身につけるべき心得、そして卒業式では看護師として実社会に出る覚悟としての心構えについて述べた。その式辞を紹介します。

 

1.入学式

 皆さんは、多大な努力と苦労を経て、入学選考過程で優秀な成績を収められ、ここに入学を許可されました。面接試験の際には皆さんのしっかりした考え方と態度に感心しました。皆さんは、それぞれの想いを胸に看護の道を志し、本学院に入学されました。これからの学院生活では、看護の基礎や専門的な知識や技術を習得し、看護の実践力を養うとともに、医療人としてまた人間として磨きをかけ、さらに成長されることを期待します。
 そこで大切なことは皆さんの成長する姿を是非ご両親に見せることです。それが親の恩に報いることになるからです。
 教職員一同は皆さんの将来を楽しみにしております。
 さて今日、医療を取り巻く環境は厳しいものがあります。社会では高齢化の進展とそれによる疾病の多様化や難度化に対応できなくなってきています。見守る家族の減少、家族や隣人の間での絆の脆弱化による、医療や介護の後退が見られます。個人や家族の努力だけでは、どうにも対処できない環境になってきています。
 このような医療状況の中では、看護師の存在や役割がより強く認識され、ますます期待されます。高齢者に寄り添い、医療や看護における看護師のリーダーシップの発揮と、看護師の能力の向上による職務権限の拡大が必要とされます。今後、ますます看護師の役割が重要になってくると思います。
 このことからも、皆さんはこれからの三年間、看護師になるための勉学が、いかに大切かを理解できると思います。新しいことを学ぶには躊躇せずに、どんどん前進し、それを楽しむことです。学ぶ喜び、学べる幸せを、かみしめることが大切です。
 将来は、皆さんがこの学院での三年間の勉学を基に、自らの職責を認識し、知識・技術をさらに磨くことです。それとともに、生涯にわたり社会に役立つべく学習を重ね、自らの世界を切り開いて行かれることを期待します。
 大きな可能性に満ち溢れた皆さんが、それぞれ抱かれた初心を忘れないことが大切です。そして“優しさと思いやり”に溢れ、時代の要請に応える自立した看護職を目指し、一生懸命勉強されることを願います。
 優しさと思いやりこれは愛であり、看護師にとって最も大切な精神です。この愛について本学院歌にすばらしい歌詞が載っています。それは「愛こそは わがつとめ わがいのち  私のために 愛はない」です。立場の弱いひとに愛を与える精神です。皆さんにはこの精神をしっかりと心にきざみ看護の道を進んで行くことを望みます。
 一方、皆さんの入学後の活動は勉学だけではありません。明るく、素直に、前向きに生活をしましょう。小樽の春には、桜の花見、夏には潮まつり、秋には学院祭そして、冬には雪あかりの路などの楽しい行事があります。それらを友人、先輩、教職員さらに市民の方々と共感しながら人間関係を豊かにすることが大事です。特に皆さんにとって一生の友となるこのクラスメイトとともに、熱く、楽しく、有意義な三年間の学院生活を送られることを願います。

 

2.戴帽式

 この戴帽式は看護師を目指すものとしての職業に対する意識を高め、またその責任の重さを自覚させる儀式であります。一般社会での成人式に相当します。成人とは一人前の人間、よき社会人であります。よき看護師になる前によき社会人となる素養を身に付けることが必要です。そのためにはまず自分の求める目標を明確にする、自分の言葉、行動に責任をもつ、自分の知識、技術と人格を磨く、そして自分の活動が人のため、社会のために喜ばれ、役立つように力を尽すことであります。
 これからの医療界においては医療に携わる人達がよく連携、協力して仕事をする、すなわちチーム医療が大事になります。それが円滑、円満に行われるためには看護師の果たす立場、役割が極めて重要です。その仕事を立派に成し遂げるには看護学生時代から自分を磨くことの覚悟と習慣を身に付けることが大切です。
 先日新聞の読者の声ですばらしい記事が載っていましたので紹介します。投稿者は将来優しい看護師さんになる夢を持った中学2年の女子生徒でした。その内容は「この素晴らしい職業につくためには努力を惜しんではいけないと思います。そのために今できることは何事も最後までやり遂げる、自分に自信を持って行動し責任感を養う、相手の立場になって物事を考えられる人間になることだと思います。」でした。本当に立派な考えであり感心しました。是非将来当学院に入学することを期待します。
 近代看護の創始者ナイチンゲール女史は「看護の仕事は快活な、幸福な、希望に満ちた精神の仕事です。犠牲を払っているなどと決して考えない、熱心な、明るい、活発な者こそ本当の看護に携わるのに相応しい人なのです」と語っておりました。
 よき看護の道、仕事に関するお手本として、私が皆さんに勧めたいのは小樽市立高等看護学院歌です。この校歌の歌詞はすばらしく、意義深いものがあり、それをいつでも歌える皆さんは幸せです。
 特に心打たれる歌詞は「愛こそは わがつとめ わがいのち 私のために 愛はない」の部分です。この愛とは人を思いやる、親切にする、大切にすることで、この愛を人のために立派に果たすことが自分の使命であるという意味であります。看護の精神を見事に表現しています。皆さんがこれから手に持つ火の灯るロウソクは自分の身を削って周囲を明るく照らし、温かく、幸せな光を放ちます。正に愛の光であり、この戴帽式に相応しいものです。この校歌の作詞者河邨文一郎先生は著名な詩人であり、札幌医科大学名誉教授でした。先生は現役のころ「自分の選んだ職業の世界で一目置かれる存在になるには人一倍努力して勝ち抜くことが重要です。」とよく私どもに仰っていました。皆さんには仲間をよきライバルとして、お互いを高めるために正々堂々と競い合うことを期待します。

 

3.卒業式

 本日の皆さんの晴れの式典には多くの関係者の方々が喜びと安堵感、そして期待と夢をもって参加されてます。
 特に皆さんを大切に育て、支えてこられたご両親、ご家族の方々は嬉しく、誇らしく、すばらしいお気持ちになられていることと思います。本日この喜ばしい日を迎えられたことに心からお喜び申し上げます。また皆さんの学業、生活の教育指導に熱心に取り組まれた教職員の方々のお蔭で、皆さんは無事卒業、国家試験合格する運びになることを有難く受け止めてほしいと思います。この教職員の努力と苦労に敬意と慰労の意を表します。
 このように皆さんは周囲の人達の温かい指導、支援、協力によって育てられたことをしっかりと自覚し、そのことに感謝し、その恩に報いるための行動をしていくことが皆さんの責任であり、義務です。
 これから皆さんはこれまでの看護学生という医療のアマチュアの世界から社会人、医療人、看護師としてプロフェッショナルの世界でその立場を理解し、役割を果たしていくことになります。
 プロフェッショナルの世界で求められることは自分の果たすべき目標をしっかり持つこと、その達成のため仕事に専念し、最大限力を尽すこと、そして成果を出して周囲に役立ち、評価されることです。
 社会人とは自分の言動に責任を持つこと、物事を客観的に判断し、歩み寄って成果を上げる大人の対応ができることです。
 医療人は医療の仕事を通して、社会に貢献することです。医療は時代の変化、社会の要望によって求められるものが違ってきます。これからの医療ではチーム医療が大切になり、人とのコミュニケーション能力が重要です。
 良きコミュニケーション形成に必要な心掛けがあります。それは「コミュニケーションに必要なあいうえお」であり、あ・明るく、い・生き生きと、う・美しく、え・笑顔で、お・おもしろく、という心掛けを持つことです。
 看護師は病気で苦しみ、悩んでいる人達に安心、やすらぎ、希望を提供するのが職務です。看護師は赤ちゃんから老人、男性、女性そしていろいろな職業、背景をもつ非常に幅広い人達の生命、人生に関わる仕事に従事します。それゆえ、医療人、社会人としても厳しく、辛い、大変な仕事ですがそれだけ高く評価される、やりがいのある仕事です。 
 この仕事を立派に成し遂げていくためには患者だけでなく職場の人達からも好かれる、信頼される要件を持つことが大切です。好かれるにはその人の人柄が明るく、素直で、前向きであること、そして信頼されるにはあきらめない、地道に努力する、失敗から学ぶ謙虚な気持ちで行動することが大切です。
 本学院は今年開学50周年を迎える良き伝統ある学校であり、皆さんはそこで学んだことに誇りと自信を持って行動することです。
 特に皆さんは学院歌の一節にある「愛こそは わがつとめ わがいのち 私のために 愛はない」という看護の基本精神にいつも接し、愛の心をしっかりと育んでいるからです。
 これから医療の現場で患者に対して思いやり、親切、尽くすという看護の愛の心を大いに発揮されることを期待します。そして医療人、社会人としても元気に活躍、成長し、本学院の発展、名声を上げるためにも貢献されることを願っています。
 卒業生、そして学院職員の皆さんの健康と幸福を心より祈っています。 

 

おわりに

 全看護学生への激励の一言:皆さんのように素直で若い人達は周囲の影響を大いに受けて変化していきます。人は環境によって変わる。良き人間関係を築くことによって幸福になります。人は努力することで変われる。目標をもって頑張ることで成長します。人は自分の意志によって、考え方、行動を変えられる。自分の言動に責任をもつことで信頼されます。人は柔軟で適切に変化することが大切です。

 皆さんの健闘を祈っています。 

 

学院長 並木昭義

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