新市立病院の建設を振り返って思うこと

 小樽市立病院の統合、新築は市当局、市民の期待と夢が叶って達成され、昨年の12月1日に開院の運びとなりました。新病院の建設は、これまで18年間にわたり市民の間で大きな論争や計画の中断など厳しい状況にありました。前市長はその難題を解消すべく6年前に病院運営に地方公営企業法の全部適用を決断し、私を病院事業管理者・病院局長として招聘しました。

 私は就任以来、背景や状況の異なる2つの市立病院で働く職員を同じ方向に導く指導者、新病院建設を推進する事業管理者、市と医師会の橋渡しをする調整者、そして議会、市民に新病院建設状況と意義を正しく伝え、啓発する伝道者としての4つの役割を担うこととなりました。そして、新病院は「コンパクトで高機能の総合病院を目指す。」ことにしました。この実現のため覚悟、配慮、断行が必要でした。

1.病院建設地に関して配慮したこと。

 私は、病院建設候補地を直接視察し、また、多くの医療関係者の意見を聞き検討しました。その結果、現小樽病院と隣接する量徳小学校を合わせた敷地が最適と判断し、これまでの築港地区からの変更を市長に進言し、議会で正式に承認されました。

  1. PTA・地域住民に対しては、病院建設地は、医療の効率性、建物の利便性、土地の有効利用、病院を利用する患者や家族、そこで働く医療者の快適性や満足度、そして、小樽市の将来展望を総合的に判断して決定されることが適切であると強調しました。
  2. 量徳小学校の全校朝会において、児童会より閉校に当たり、リングプル回収活動資金から歩行器の贈呈がありました。児童が自分達の置かれている状況を冷静に、客観的に見詰めながら、大変立派で有益な行動をとれたことに感動し、心から感謝と称賛の言葉を述べました。
     この児童の善意に配慮して、量徳小学校の思い出がいつまでも残るよう、病院敷地内に量徳小学校メモリアルガーデンを造成することを確約しました。児童には、将来医学・医療の道に進み自分達の学んだこの土地に建つ新市立病院で働き、市民の医療のために貢献することを大いに期待しますと激励しました。

2.病院建設工事に関して配慮したこと。

  1. 市内業者に配慮して、施工は建築、空調、給排水、強電、弱電の5工事の分離発注、そして、入札は総合評価落札方式としました。
  2. 3回目の入札で幸運にも5工事とも大手企業と市内業者の共同企業体に決定しました。
  3. 工事費は、建物の質が確保される範囲内で、できるだけ低価格になるよう最大限配慮に努めました。その結果、工事単価は最近道内で新築した8市立病院の平均に比べ極めて低価格でした。
  4. 病院建設の総事業費は約137億円ですが、補助金の導入や、交付税措置のある起債(過疎債、病院事業費)を借り入れできるので市と病院の実質的負担は約71億円(51%)となります。このうち病院が37%、そして、市(市民)が14%の負担です。市民に多額の負担を掛けないように配慮しました。
  5. 5共同企業体の請負額は約92億円でしたが、地元企業への工事関係費用および飲食費用を含めると約45億円が地元に還元されていることになり、小樽経済に貢献できたものと思います。

3.新病院開院に向けて配慮したこと。

  1. 新病院における具体的決定事項としては建設地(量徳小学校跡地)、病床数(388床)、建設費(約137億円)、オープン病床(おおよそ30床)、および救急医療体制などでした。
  2. 決定に当たっては、あくまでも私が病院事業管理者として医学・医療学的、客観的、高所的見地および交付金、起債申請期日の時間的見地から総合的に検討して断行しました。  
  3. 新病院の規模と機能について。
     道内の市立病院で災害拠点病院、総病床数400床かつ一般病床300床以上、脳外科、心臓・血管外科手術、精神科病床を有する条件を満たしたのは札幌、函館、釧路、室蘭、砂川、名寄および小樽の7施設でした。小樽の新病院は病床数400床以下のコンパクトな建物としました。

4.新病院の医療方針について配慮したこと。

  1. 診療の3つの柱は、がん診療、脳・神経疾患診療、および心・血管疾患診療です。
  2. 2つの特性は、他の医療機関で担うことのできない疾患の診療(専門外来や入院治療など)を行うこと、および地域医療連携のセンター機(地域医療連携の調整や医師教育支援)に取り組むことです。
  3. 質の高い医療を行うための施設、設備を整備し、小樽・後志の地域医療の中心的役割を果たす責務がある。

5.新病院の設備、医療機器、情報システムについて配慮したこと。

 圏域内での救急やがん診療に対応することにしました。そのため圏域内唯一の設備としてヘリポート、医療機器としてハイブリッド血管造影装置を有する手術室、放射線治療装置、PET-CT装置を設置、そして、医療情報システムを整備しました。現在これらの設備、機器がすべて揃っている市立病院は、最近新築の砂川と小樽の2施設です。当新病院は質の高い高機能の総合病院である条件を備えています。また、それらの有効活用が重要です。

 新市立病院の建設が完了し、開院した現在、診療や経営など病院の機能面の運用が円滑、円満に実施されることを期待する。また、患者や市民から高い評価を受けることができるように果敢に対応することが大切です。これから私は前述の4つの役割に加えて禅譲者として、新病院が時代とともに発展するように、適任者に引き継ぐ覚悟が必要であると思います。

 

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