小樽市病院事業管理者・病院局長 退任祝賀会における挨拶文 並木昭義

2025年4月12日 グランドパーク小樽

 皆様今晩は、本日は私の小樽市病院事業管理者・病院局長の退任祝賀会にご出席下さり、誠にありがとうございます。また、先程祝辞を頂き、そして後半にテーブルスピーチを頂く方々には心よりお礼を申し上げます。
 さて本日の退任挨拶は16年間の勤務を終えた私にとりまして最後の思い出に残る仕事になります。
 昨年は小樽市立病院開院10周年記念行事が職員皆さんのすばらしい企画と活動により無事にかつ盛大に執り行われ、高い評価を受けました。なおこの度の記念事業において、3月発刊の病院誌第13号は10周年記念行事を掲載した記念特集号であります。そして一般市民向けに出版した「小樽市立病院ガイドブック」の著書は本日皆様のお手元に記念品として配布されております。
 さて、コロナ禍以後、医学・医療界は明らかに新しい時代を迎えており、その変化に適正に対応しなければなりません。
 今年度当院においては3つの新しい医療体制の改変の実施が求められています。
 1つ目の新しい人事体制に関して、昨年末に市長との話し合いで、この厳しい医療状況での対応を若い世代に信頼して任せることにしました。そこで私の後継人事として病院事業管理者・病院局長には有村佳昭(よしあき)前病院長、新設の病院局副局長には金内優典(かねうちまさのり)前副院長、そして病院長には越前谷勇人(はやと)前副院長を任命致しました。3名のトップリーダーには格言にもある三人寄れば文殊の知恵の如く、大いに話し合って活動されることを期待します。また職員皆さんには当院の目標に向って団結して進むことを切にお願いする次第です。そして私は最高顧問として高所的、客観的な立場と役割で関わることに致します。
 さて1つ目の人事問題で大切なことは組織や社会において各個人が己の立場と役割をよくわきまえて行動することです。この立場と役割の意義について6つの事項を述べることにします。
まず
(1)人は立場での仕事、行動によって周囲から評価される。

(2)人は得られた立場を謙虚に受けて、正しく使うことで周囲に喜びと幸せをもたらす。
それから
(3)立場は人を作る、人を変える、人に教えることによって、その人の果すべき役割が明確になる。

(4)役割はその人に割り当てられた厳粛な任務である。

そして

(5)人は立場に相応しい役割を果さなければ評価されない。

(6)人は立場から離れると、その人のこれまでの人間性を周囲から厳しく評価される。

以上の意義を理解して行動することが組織人、社会人として大切になります。

 

 2つ目の新しい医療機器に関して、当院の日常診療で必要なことは、手術支援ロボットの早急な導入です。当院ではがん手術症例が多いことから、この機器が診療および若手医師の教育に役立つものになります。
 

 3つ目の新しい時代に向けて、当院では改めて医療体制と活動の見直しが必要です。当院の医療の質を高めて、信頼される医療体制にするには5つの「医療の質」がパランスよく、高いレベルに充実、発展することです。
 その医療の質とは臨床に役立つ診療の質、コミュニケーション能力が大切な医療安全、サービスの質、現状の把握と分析が重要な経営の質、人間の成長に必要な教育、人材育成の質、そして実際に役立つ地域医療の連携、支援の質であります。
 それでは現在そして今後の当院の果たすべき役割と実施について述べることにします。

その1、災害拠点病院として;救急医療、高度急性期機能の推進、小児・災害・精神などの不採算・特殊部門に関わる医療の提供を行う。

その2、後志圏域に唯一の地域がん診療連携拠点病院として;専門的がん医療の提供、連携協力体制の整備および患者への相談支援や情報提供を行う。

その3、地域医療の推進として;「かかりつけ医」を普及して、患者紹介の積極的な実施により、後志圏域で初となる「地域医療支援病院」の運営を行う。なお昨年の11月に当院は地域医療に熱心な取り組みが評価され、令和6年度北海道社会貢献賞を受賞しました。

その4、基幹病院として;限られた医療資源である医師・看護師を確保しつつ、地域全体で効率的に活用すべく、関係医療機関への人材の派遣支援を行う。

その5、後志圏域の精神医療の推進・普及として;認知症患者の診療を積極的に行う。以上のことであります。

 さて私は16年間、小樽市病院事業管理者・病院局長として周囲の方々の温かい支援、協力を得て仕事に取り組んできました。その一方、この度の開院10周年記念行事の実施は私にとりまして年齢的、心身的および心臓疾患の特徴的な要因から最後の厳しい試練になると覚悟して取り組みました。
 私は4年前より超重症大動脈弁狭窄症にて治療を受けており、昨年の12月6日に札幌医科大学病院において経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)タビが実施されました。手術は難航しましたが無事終了致しました。
 さて私は13年前にも冠動脈狭窄症にて緊急のバイパス手術を受けました。この時は病院建設費用の入札成立に手間取ったことから心身のストレスが続き辛い思いをしました。
 私はこれまでに2回心臓手術を受けましたが医療チームの適切な治療と対応によって円滑、円満に回復しました。このことはありがたく、心から感謝致しました。
 最後に私の思い出に残る局長メッセージを贈ることにします。

はじめに
その1、まず自分の人生は責任と義務をもって自分で考え、決断し、実行して、成果を上げる。そのためには能力、気力、体力が必要であり、このうちで体力が引き際、引退を決めるうえで重要な要因になります。そして自分の立場と役割を立派に果たしていくには、基礎体力を鍛え、体質を改善し、体調を整えて総合体力を維持することが大切です。このことは言うは易く行うは難しであり、実行には覚悟と忍耐が必要になります。

その2、地域医療の喫緊の重点課題として、人口減少を見据えた急性期医療のあり方、医療機関の役割分担、在宅医療の提供体制の確保です。
当院の重要な役割の一つは、後志圏域唯一の地域医療支援病院として手術や救急に確実に対応できる急性期機能を担うことです。

その3、これから医療には「生活者の視点」を入れていかなくてはなりません。地域の医療が手を携えながら、治し、支える医療を提供していくことになります。同時に予防医学も大切であり、地域住民の皆さんとのコミュニケーションも深めていくことが求められます。

その4、当院が理想としているのは、患者さんとご家族に「この病院で診てもらえてよかった」と心から思ってもらえることです。最終的に重要となるのは患者・家族と医療者との良き人間関係です。

おわりに
その5として、当院には後継者として優秀な若き人材が育ってきております。当院は3年後には創立100周年の重要な節目を迎えます。今後は彼ら若い世代が中心になって活躍、活動することが期待されます。そこで最も大切なことは職員の成長と当院の発展そして地域医療の充実が円滑、円満に実施されるように常に心掛けることです。以上であります。

 それでは本日ここにご出席の皆様のご健勝とご多幸を祈って、私の皆様方へのお礼と期待のご挨拶とさせて頂きます。本日は誠にありがとうございました。

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