言葉の意義を知る―局長の提言・訓辞と有益な名言・格言から―

はじめに

 言葉は音声や文字によって思想、意思、感情などを人間の間で伝達する重要なものである。その言葉の使用する目的と内容によってその名称が付く。提言は自分の考え、意見を述べる、そして訓辞は部下に自覚をうながすために演説する言葉である。また名言は人生全般に役に立つ、そして格言(箴言、金言)は人生の戒めや教訓になることを短い言葉で書かれる。言葉は人が生活、仕事を円滑・円満にしていくうえにその意義が極めて大きい。私は局長として職員が自覚と意欲をもって立場と役割を果すように提言、時には訓辞を述べる。また職員が仕事に生き生きと、興味を持って従事できるよう役に立つ名言、格言を活用する。今回その実際について述べる。

1.局長の提言・訓辞

 私は立場、役割上、主宰する会議、行事および講演、論文の活動で提言、訓辞を行う。

1)小樽市立病院の重要課題と対応

①職員の自分と病院の組織が時代と社会から何を求められているか自覚して臨機応変に方針、行動を変えていくことが重要である。

②この激動の時代に即応、適応できるように個人も組織も変化しなければならない。

③「人間万事塞翁が馬」で、この世の中何が幸いするか、しないかわからないので現状に一喜一憂せずに堂々と諦めずに行動する。

④「ピンチのあとにチャンスがあり」で、チャンスを生かせばハッピーになることを信じて行動する。

⑤この苦難の時には「人生意気に感ずる」で、自分のことより他人、組織のために喜んで働く者の活躍が必要である。

⑥自分と同じ目的、考え方を持つ信頼できる人達と力を合わせて頑張る。困難に屈せず目的を持ってやり続ける。

⑦重要課題の解決には全職員の心意気と頑張り、そして勇気ある対応が必要である。

2)課題解決には勇気ある行動が求められる

勇気には5つの種類と意味がある。

①気付く勇気:自分の本当の実力、存在に気付くにはプライド、立場を捨てる覚悟をする。

②押す勇気:成功するには自分を奮い立たせ、勢い付けて押し進める。独善を避け、第三者の見解、協力を素直に受ける。

③我慢する勇気:うまく行かない時には感情的にならず、好転するのを待つ。

④引く勇気:困難に直面した時、冷静、客観的に考え一旦引く覚悟をする。

⑤認める勇気:決められた結果には私心を捨て、公平、公正な態度で認める。

3)職員が活躍、成長するために必要な要件

①立派な仕事をするにはPANの心掛けが必要である。Priority優先事項、Action行動、Never give up諦めないである。

②円滑な人間関係には謙虚、感謝、貢献の姿勢が必要である。謙虚は人に好かれ、感謝は信頼され、貢献は喜ばれ、尊敬される。

③良き人脈形成には「コミュニケーションあいうえおの心得」が必要である。心得のあは明るいで安心感を、いは生き生きとで勇気を、うは美しいで快感を、えは笑顔で幸福を、おは面白いで楽しみ、喜びを与える。

②人間の幸せは:人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされることの4つである。

4)組織が生き延びるために必要な条件

①組織が存在するためには明確な目標を立てそこに向って皆が進む。

②組織が発展するにはそこに所属する人が進化、成長する。

③組織が円滑、円満に運営されるにはしっかりした有益なシステムを構築する。

④世の中で人が生き残っていくには強いだけでは、賢いだけでは、正しいだけでは生き残れない。変われるものだけが生き残れる。

⑤自分達のためだけに変化して動くのではなく、世間および時代に役立つ行動をしなければ高い評価を得られない。

⑥10年毎に方針を見直し、改善を図ること、そして30年毎に時代の流れ、変化をよく見て必要な改革を進めることが必要である。

5)正念場を迎える組織には改革が必要である

①改革というのは制度や運営のやり方を変えるだけでない。何よりも大切なものは人間が自分を変えることである。

②自分を変えるとき一番差し障りになるのはこれまでの古い考えや、風習へのこだわりであり、そして自分の考えが正しいのだと思い込むことである。

③改革の一番の難しさは古いことを壊すことでも新しいことを始めることでもない。始めたことを如何に維持するかである。

④改革の要点は人員削減ではなく、仕事の中身の改革である。単純な事務を効率化し、今より付加価値の高い仕事をしてもらう。

⑤改革は人、組織、社会に役立つことで真の満足、幸福をもたらす。

6)職員への訓辞

令和元年4月1日の辞令交付式で、局長として新規採用の医師27名、看護師24名含めコメディカル33名の計60名に対して職員の心構えと覚悟について以下の訓辞を行った。

①当院の全職員は当院の理念、5つの基本方針に従って活動している。そのことをしっかり自覚して活動に加わる。

②診療が円滑に運営されるため種々の規約、マニュアル、ガイドラインがある。それらを予め読んで行動する。

③プロの医療人としての仕事と自分の力量の大きな差に気付く。その差を少しでも詰める覚悟で努力する。

④努力が報いられるには明るく、素直で、前向きな態度で行動する。

⑤新人の大切な具体的態度は挨拶ができる、約束を守る、コミュニケーションがとれる。

⑥わからないこと、失敗したことは素直に連絡し、対応を聞く。聞くことは恥ではない。失敗は恐れず、繰り返さない。

⑦自分一人で悩まずに出来るだけ早く友人、先輩に相談する。自分を悲劇の主人公にして嘆き、不平、不満を訴えても解決しない。

⑧仕事は人からさせられたら辛く、ストレスになるが自ら意欲をもってすれば楽しく、達成感が得られる。

⑨転勤医師は「郷に入れば郷に従え」で、当院の方針に従って活動する。それにより早く馴染めて、良き協力、支援を受けられる。

⑩現在、当院は質の高い医療、チーム医療、地域医療の実施に最大限力を注いている。そのことを知り行動する。

⑪質の高い医療とは診療の質、患者の医療安全とサービスの質、経営の質、人材育成・教育の質が高く、これらが良循環に実施される。

⑫以上のことをしっかり自覚し、お互いに話し合い確認し合って、同じ目標に向って一致団結して協働作業を実施する。

 

2.職員にとって有益な名言・格言

今回は多くの分野で活躍された方々の中で最近感動した有益な名言・格言を提示する。なお各項毎に一行コメントを加える。

1)孔子の箴言:君子とは如何に

①君子とは立派な人格を持って人に信頼される者である。

②自分が行う仕事に熱心に取り組み、その成果を周囲の人が納得、理解できるようにきちんと説明できる者である。

③行動しながら考えることが大切である。

④行動する前にいろいろ不平、不満、心配を言って行動しない者は実力、実績をあげることができず、君子にはなれない。

君子は恕の気持、思いやりが大切。

2)ノーベル賞への道(江崎玲於奈博士)

①行き掛り、しがらみに捉われない。そうしなければ新しい飛躍は見えてこない。

②権威にとらわれない。大先生に師事してその通りにしたらその賞は大先生にいく。

③無用なものは捨てなければいけない。人間の容量は決まっている。

④戦うことを避けてはいけない。

⑤初々しい感性を持とう。常に好奇心を忘れてはいけない。

研究者は情熱、集中力、忍耐力が必要。

3)人の上に立つ人の要件:(高僧、鈴木正三)

それは先見の明がある人、時代の流れを的確に読める人、人の心をつかむことができる人、自己の属している共同体、組織全体について構想を持っている人、気遣いができて人徳のある人、大所高所から全体を見渡せる力量を持っている人、上に立つにふさわしい言葉遣いや態度を伴える人である。

リーダーは部下に惚れられる人間性が重要。

4)理想のリーダーの6条件:(作家、半藤一利)

一つ・自分自身で判断すること

一つ・部下に明確な目標を与えること

一つ・常に権威を明らかにせよ

一つ・情報は自分の耳で聞け

一つ・想像と現実とを引き離せ

一つ・部下に最大限の任務の遂行を求めよ

リーダーは仕事を任せても、最終責任者。

5)「心の声に耳を傾け、前向きに生きること」の五か条:(オリンピック柔道金メダリスト、山下泰裕)

一つ・私は常に自然体で生きる

一つ・常に自分の良心に従って生きる

一つ・常に家族と共に生きる

一つ・常に柔道と勉強を通して、自らの

精神、肉体、知能を磨き高め、人間性の向上を目指す

一つ・常に陰徳を心掛け、利他の心、感謝の

心で生きる

 柔道は素直な者が強く、信念ある者が勝つ。

6)つもり違い十訓:(西川教授退任記念誌)

一.高いつもりで低いのが教養

二.低いつもりで高いのが気位

三.深いつもりで浅いのが知識

四.浅いつもりで深いのが欲の皮

五.厚いつもりで薄いのが人情

六.薄いつもりで厚いのが面の皮

七.強いつもりで弱いのが根性

八.弱いつもりで強いのが我

九.多いつもりで少ないのが分別

十.少ないつもりで多いのが無駄

他人より自己を知ることが困難。

7)人の変化と成長の因果関係:(スイスの哲学者アミエル)

心が変われば態度が変わる

態度が変われば行動が変わる

行動が変われば人格が変わる

人格が変われば人生が変わる

人の心、人格、人生の因果関係が大切。

8)男の修行(山本五十六連合艦隊司令長官)

苦しいこともあるだろう

言いたいこともあるだろう

不満なこともあるだろう

腹の立つこともあるだろう

泣きたいこともあるだろう

これらをじっとこらえてゆくのが

男の修行である。

厳格さの中にも柔軟性と寛容さが必要。

9)「雑草のごとく」:(世界陸上マラソン金メダリスト、谷口浩美)

夢なき者、理想なし

理想なき者、目標なし

目標なき者、実行なし

実行なき者、成果なし

成果なき者、喜びなし

 目標は期待と使命感そして実行力で達成。

10)今こそ出発点(大相撲藤島部屋に掲げてある心得)

人生とは毎日訓練である

わたくし自身の訓練の場である

失敗もできる訓練の場である

わたくし自身の将来は今この瞬間ここにある

今ここで頑張らずにいつ頑張るのか

力士の稽古は体を鍛える、食べる、休める。

 これらの名言・格言が職員の皆さんの生活、仕事に役立つことを期待する。

おわりに

言葉を使う人はその人の才能、人間性、人生経験など実力、実績が明らかになる。人間が成長、幸福になるには言葉の意義を知って、自己を磨き、円滑・円満な人間関係を築くことが大切である。

 

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