開講60周年を迎えての思い出と期待

 この度札幌医科大学麻酔科学講座が開講60周年を迎えることは誠に喜ばしく、感慨深いものがある。当教室の60年間は3代の教授の師弟関係によってその伝統が引き継がれた。この教室の活動時期を20年毎に3期に分けてみた。高橋長雄初代教授が昭和32年に麻酔学講座を開講後昭和52年までの20年間は創設、啓発期であった。麻酔科に対する理解が得られるために必死に啓発活動をしていた上司、先輩達の苦労を目の当りにした。私は昭和45年に入局した頃より手術麻酔だけでなく、救急・集中治療、ペインクリニック領域の活動が加わり、我々の存在価値を高めるため大いに努力した。昭和52年から平成9年までの第2期の20年間は、麻酔科教室の充実、発展期であり、多くの新入教室員入局、新教授輩出があったことから教室の学内外からの評価が高まった。私は昭和62年に2代目教授に就任し、教室員の意識改革、人材育成、教室の発展に力を注いだ。この時これまでの教室の考え方、方針等を参考にしながら教室の理念、基本方針を作成した。その基本姿勢は臨床に強く、熱心である。臨床に役立つ研究を行う。信頼される麻酔科医を育成する。そして社会に貢献することである。私の後半の平成9年から平成22年の山蔭教授3代目就任後の平成29年までの3期目の20年間は躍進、成長期であった。多くの学会を主催した、学内外で責任のある立場に立った、新教室員入局、新教授誕生などに恵まれたことであった。開講60年とは人間の60歳の還暦に相当し、初心に還って新たな段階を歩み出すことである。これからの20年間は再生、進展期になる。再生は生まれ変わった気持ちになる、進展は進歩し発展させることである。この記念すべき年に教室員の皆さんに期待することは今自分の置かれている場所で自分の立場、役割を良くわきまえて、周囲の人達に役立つ、喜ばれる仕事を成し遂げて、見事な花を咲かせることである。

 人を幸福にするシンボル的花に四葉のクローバーがある。その4つの葉にはそれぞれ勇気、愛情、信頼、希望という意味がある。我々が良き仕事をするには一歩前に出る勇気、自分の成すべきことには愛情、円滑、円満な人間関係を作るには信頼、そして目標、夢を実現させるには希望をもって行動する。そのようにすることで人間は成長し、見事な花を咲かせる。その花が多く集まる組織は輝き発展する。教室員皆さんの健闘を祈る。

 

小樽市病院局長、札幌医科大学名誉教授

並木昭義

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