小樽・後志圏域の呼吸器内科診療の維持のために

 小樽・後志圏域の呼吸器内科の現状をお知らせします。小樽市医師会員の皆様におかれましては何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

小樽協会病院呼吸器内科大幅縮小後の 小樽・後志圏域 の呼吸器内科診療の維持のために

2022年 4 月 2 1 日
小樽市立病院院長 有村 佳昭
小樽協会病院院長 宮本 憲行
小樽市医師会会長 鈴木 敏夫

小樽市医師会
会員各位

謹啓

 陽春の候、平素は私どもの病院および医師会活動に対して格別のご厚情誠にありがとうございます。

 今回の小樽協会病院のように常勤医の最も多い呼吸器内科が科ごと突然立ち去るような状況 (2022年4月現在は2名の常勤医で、 6月以降は1名の常勤医体制)はあまり前例がなく、当該圏域の呼吸器診療は最大の危機に瀕しています 。
 そこで、まず 、協会病院呼吸器内科 大幅縮小後の主に市立病院呼吸器内科の現状を説明いたします。次に、協会、 市立病院 および医師会の見解をまとめ 、持続可能な小樽・後志圏域の呼吸器診療のための対策 案を作成いたしました 。 今後の小樽、後志地区の呼吸器診療は厳しい時代となります。 図らずも小樽医師会の皆様にはご不便やストレスをおかけすることとなり、誠に不本意で 、心苦しく思っております。皆様のご理解、ご協力のもと呼吸器診療の タスクシェア/シフト により、この難局を乗り越える方策としたいと思います 。持続 可能な小樽後志地区の呼吸器診療に向けて 、お互いの歩み寄りが何より重要と考えております 。

 ご高配のほど何卒お願い申し上げます 。

謹白

Ⅰ.小樽協会病院呼吸器内科大幅縮小に伴う小樽市立病院呼吸器内科の現状

 2022年3月18日時点での地域連携室経由での市立病院呼吸器内科の患者紹介数については図1の通りで、協会病院からは計12 名を受け入れました。肺がんや間質性肺炎、COPD(在宅酸素使用)など経過が長く複雑かつ 状態が不安定な患者が大多数でした。
 3/5~3/18での市立病院呼吸器内科への入院患者は計14名(予定入院が3名、臨時入院が11名でそのうち協会病院紹介患者が4名)であり、最大で人工呼吸器が2 台、NPPV が1 台、ネーザルハイフローが2台稼働したこともありました。コロナ禍にも関わらず最近は、常にオーバーベッドで稼働しており(図2 呼吸器内科病床利用率 、かかりつけ患者の入院を延期したり 入院化学療法や放射線治療を外来に移行したりして何とか対応していました。不幸にもそれによって患者の状態が悪化してしまった事例もあります。
 このような状況下のため、後志の病院からの肺がん疑い患者や間質性肺炎患者の臨時入院依頼を数件お断りせざるを得ませんでした。既に小樽・後志の呼吸器診療は破綻しかけていると言わざるを得えません。呼吸器内科は現在4人でかろうじて診療を維持していますが、4 月から3人に減員となり、3 人目は4年目の若手医師です。一人でも体調不良などで脱落した場合は診療が維持できなくなるのは目に見えています。

協会病院呼吸器内科の大幅な縮小に対し、北大第一内科は協会病院へ出張医を派遣しています。しかし、当地域における呼吸器診療の維持という観点では十分とは言い難いものがあります。これらのことから 、現行のまま市立病院が協会病院の呼吸器患者の診療を請け負った場合、近い将来、市立病院の呼吸器内科医のキャパシティーを超え、小樽・後志圏域の呼吸器内科診療が破綻するのは必至です。
これを防ぐために、この現況について小樽市医師会の十分な理解・了承を得た上で、当地域の呼吸器診療を適正に分担 タスクシェア/シフト)する必要があると思われます。今回のように常勤医の最も多い呼吸器内科が科ごと突然立ち去るような状況はあまり前例がないと思われますが、私共なりに破綻を防ぐためにも以下の提案をさせていただけますと幸いです。( 呼吸器患者の一極化という点で共通している釧路周辺地域の対策を参考にしています。)

II. 小樽・後志圏域で持続可能な呼吸器診療のために( 一極化による市立病院および大幅縮小後の協会病院呼吸器内科医に対するburnout対策)

1. 細菌性肺炎(特に高齢者)の取り扱い

 専門性の高い肺癌や間質性肺炎について、市立病院への一極化は避け難いと思われます。一方、一極化する必要性が低い、専門医・非専門医で治療内容に差が出にくい細菌性肺炎患者の取り扱いは各病院へ分散(タスクシフトできると助かります。下記に 具体案を提示させていただきます(図3左) 。

(1) 細菌性肺炎に関しては、原則自院で治療します。開業医が入院加療を必要と判断した場合、下記1)-3)のいずれかで対応します。
1)原則、市立病院および協会病院以外の有床病院への転送をお願いします。
2)オープン病棟をお持ちの先生は当院オープン病棟利用をお願いします。
3)内科二次輪番日ならば当番病院に依頼します 。
(市立釧路総合病院の場合は、市立病院が二次当番で細菌性肺炎患者が入院しても 、早期から治療を引き継いで頂けるよう事前に話し合いの付いた後方病院があるそうです。

2. 紹介の時点で緩和ケアのみの方針(BSC)になるような肺癌の取り扱い

 積極的治療適応の乏しい(高齢者など)肺癌患者は紹介されても、初診時からBSCの方針になることがほとんどです。これを現状のまま市立病院の呼吸器内科で経過観察すると、 「癌の進行で自宅生活が厳しくなる→時間外・救急外来受診する→市立病院の呼吸器内科に入院させざるを得ない→転院には時間がかかり病床が逼迫する→積極的治療を早急に要する専門性の高い患者が入院できない」という悪循環に既に陥っています。このままでは、この状況には改善の余地がありません。そこで、当科を紹介受診された際には、呼吸器内科専門医の立場からBSC方針が適切であることを患者や家族に説明致します。その方針を納得された後は、昨今の病床逼迫・呼吸器内科のマンパワー不足を説明し、ひとまず紹介元の医師に逆紹介します。そこで逆紹介された医師は、 下記1)、2)のいずれかで対応します(図3中)。
1)外来緩和ケアを行いつつ 、自宅生活が困難になった際はお看取りまでの入院が可能な診療機関に紹介します(近隣の有床病院の理解や輪番制などの協力体制が必要)
2)あらかじめ対応可能な病・医院のリスト化し、在宅看取りの可能な診療医に紹介します。

3. いわゆる“ 行き倒れ”の取り扱い

 救急搬入の原因として、単に生活環境が著しく悪いなど社会的背景の要因が大きい患者も、最終的に肺炎があれば落としどころとして呼吸器内科に診療を依頼されることが多いのも事実です。市立病院の性質上、この類の症例を受け入れないわけにはいかないのですが、一旦入院すると転院先探しは容易ではありません。協会病院をはじめ協力いただける病院に、上述した緩和症例 や“行き倒れ”症例などを積極的に受け入れていただき、その診療の一部をご負担(タスクシェア)いただくことなどを検討お願いいたします (図3右)。

4. 呼吸器内科患者上限の設定

市立病院の呼吸器内科の定床数 (20床)とは関係なく、受け入れ要請があった時点での在院患者の重症度なども勘案して、自分たちのキャパシティーを超えていると判断した場合は、最悪、患者を断らざるを得ません。同じことが協会病院呼吸器内科にも言えます。

5.関連大学教室の協力体制の整備

 札幌医大第三内科の千葉教授は、この件を大変懸念され3月24日市立病院へ来訪されました。その際のお話では、以下の札幌市内の7病院に小樽からの患者をスムースに受け入れられるよう通達しているとのことです。

  • 札幌医科大学附属病院
  • 札幌厚生病院
  • 札幌 JR 病院
  • NTT 東日本札幌病院
  • 斗南病院
  • 手稲渓仁会病院
  • JCHO 北辰病院

 一方、北大呼吸器内科今野教授からは、協会病院呼吸器内科の縮小にあたり、地域医療にできるだけ影響を与えないようご高配いただき 、協会病院の再来診療が継続できるように出張医を派遣いただいております。6月以降も1名常勤医が残留しますが 、 紹介を含む新患外来の再開には、もう少し調整と時間が必要になると思われます。私共としては北大との人事の糸はかろうじてつながっていると考えています。この細い糸が切れないように、つまり、来年度に常勤医ゼロ、出張医ゼロという最悪の事態とならないように、これからも北大との粘り強い交渉を継続して参ります。

図3.呼吸器診療のタスクシェア/シフト

このページの先頭へもどるicPagetop

À メニュー
トップへ戻るボタン