骨折リエゾンサービス(FLS)

骨粗しょう症が原因で骨の強度が低下し、小さい外力で生じる骨折を脆弱性骨折と呼びます。脆弱性骨折は一度生じると二次性骨折リスクが極めて高くなるため、骨折治療を受けた方に再発する骨折を未然に防ぐことは本人のみならず、家族、地域社会、医療経済の面からも非常に重要なことです。そこで当院では2022年7月より骨折リエゾンサービス(FLS; Fracture Liaison Service)を開始しました。リエゾンとは「仲介」「連携」「橋渡し」を意味するフランス語で、FLSは二次性骨折予防に努めるチームのことです。医師だけでは診療時間に限りがあり、十分な医療を提供できません。そのため。看護師、薬剤師、理学療法士、診療放射線技師、管理栄養士、医療相談員、事務員、メディカルクラークなど様々な職種で協力して各職種の強みを生かして、作業を分担することで、骨粗しょう症治療開始率、継続率の向上や定期的な骨密度測定の高い継続率を維持することが可能となりました。

当院の取り組み

当院では大腿骨近位部骨折に対するFLSを開始しました。
取り組みとして手術治療だけではなく、骨粗しょう症治療の開始、継続の重要性についてもご理解いただくために、大腿骨近位部骨折の治療の際には手術内容と同時に骨粗しょう症治療の必要性、重要性についても記載した説明用紙、同意書を用いて説明しています。治療の流れや骨粗しょう症検査の流れをプロトコールを作成してスタッフ間で共有して治療を行うことで、FLS開始前には治療開始率が23%であったものが、FLS開始後には90%以上となり、高い開始率で治療することが可能となりました。また、骨密度測定は半年を基準に定期的に継続していただきます。今後は背骨の脆弱性骨折である椎体骨折にも適応していくことを検討しています。
 また、当院だけではなく、地域のかかりつけ医の先生方とも連携をとり、当院で検査を行い、適切な治療指針を当院で計画した上で、かかりつけ医の先生方に治療を継続していただくことで、この地域の脆弱性骨折をより防ぐことにつながると考えています。

骨粗しょう症について

骨粗しょう症とは骨の強度が低下して骨折しやすくなることを言います。骨質が悪くなり、骨の構造がスカスカしてもろくなってしまうことから、背骨がつぶれてしまったり、転倒しただけで骨折を生じてしまいます。骨粗しょう症は痛みなどの自覚症状がないことが多いため、「自分は大丈夫!」と思っている方も多いと思います。
 日本では人口の急速な高齢化に伴い、骨粗しょう症患者は年々増加しています。「骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン 2015年版」によるとその数は1300万人と推測され、椎体、大腿骨近位部、前腕骨などの骨折が生じやすく、その後の日常生活に大きく影響を及ぼします。最近では「骨卒中」という言葉もあり、転倒により様々な外傷によって移動能力をはじめとする日常生活動作が著しく制限され、生命予後が悪化してしまいます。

日本は世界でもトップクラスの長寿国です。そのため、最近では健康で自立した生活を送る期間を表す「健康寿命」が重要視されています。しかし、平均寿命と健康寿命には約10年程度の差があると言われており、健康寿命を短縮させる要因の1つとして骨粗しょう症による骨折があります。骨粗しょう症に伴う骨折には手術が必要になることがあり、高齢での手術は体に大きな負担をかけてしまいます。長く生き生きと生活をするためには骨粗しょう症の予防、治療が大切になります。
 内臓の病気は命に直結するイメージがつきやすいので、定期的に健康診断を受ける方は多いと思います。骨も同様で定期的な骨密度の測定、薬物療法、運動療法、栄養管理など様々な側面から骨粗しょう症による骨折を予防することが大切です。これらを合わせて治療することで、健康寿命を延ばすことにつながります。自分の骨はどのくらいの強さなんだろう?とお考えの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。(文責 整形外科 主任医療部長 佃 幸憲)

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