当院心臓血管外科、佐藤宏医療部長が第124回日本外科学会学術総会でYoung Investigator’s Awardを受賞し表彰されました
学会名 :第124回日本外科学会定期学術総会 (2024年4月18日)
受賞名 :Young Investigator’s Award
発表者 :佐藤宏、深田穣治、小松茂樹、田宮幸彦
座 長 :東京慈恵会医科大学 心臓血管外科 國原孝主任教授
発表名:冠動脈バイパス術におけるfree radialとITA+radial artery I-composite graftの遠隔期20年成績
発表要旨:対象 1996/8~2022/4、小樽市立病院で施行した冠動脈バイパス術(CABG)症例。結果 20年生存率は橈骨動脈(radial artery:RA)使用例70%が非使用例52%に比べて良好(P<0.01)。20年開存率はfree RA 72%、内胸動脈(ITA)-RA I-composite(直線的に連結)80%、ITA 91%:ITA-RA I-compositeはfree RAより良好(P<0.03)でITAに劣らない(P>0.5)。
【心臓血管外科 深田穣治副院長コメント】
Young Investigator’s Award は日本外科学会学術総会で当年 1 人が選出される academic surgeon として最高の栄誉です。
佐藤先生は、当院の心臓冠動脈バイパス手術症例で、橈骨動脈グラフト使用例の術後20年(≒終生)における生命予後と開存性を検討しました。動脈グラフト、特に内胸動脈は、静脈グラフトに比べて10年後でも詰まりにくいことが知られています。心臓の栄養に不可欠な冠動脈左前下行枝に内胸動脈をつなぐことで、心臓バイパス手術は大切な命の時間と質を改善します。前下行枝以外の冠動脈も塞がっている場合、当院では橈骨動脈(腕)を用いてきましたが、橈骨動脈に関する研究は海外からもほとんど報告がありませんでした。
今回の研究結果から、当院の特徴的な術式である対側の内胸動脈を橈骨動脈で延長してつなぐ方法は、開存性を生涯にわたって改善することがわかりました。従って、左前下行枝に内胸動脈を、その他の冠動脈に橈骨動脈をつなぐことで、その後の人生において、追加の治療、入院や通院の頻度、出血合併症のリスクなどが減り、患者さんのメリットは大きいと我々は考えています。
研究結果はすでに英文雑誌に掲載されていますが、日本の外科領域で最も権威のある学会に評価していただいたことを励みに病院一丸となってさらなる研鑽を重ねていきます。
【座長の國原孝 慈恵医大教授からのコメント】
受賞にふさわしい素晴らしい発表でした。Single free RAよりもRITA-RA compositeの方が長期開存が良いというのは、ITAよりNOが産生されているからではないか?という推論の強烈な根拠となりうるので、画期的だと思いました。
Twenty-year outcomes of free and I-composite radial artery grafts for coronary artery revascularization:Surgery Today 2023; 53: 1132–1138 Sato H, Fukada J, et al. Department of Cardiovascular Surgery, Otaru General Hospital, Otaru, Japan