市立病院の精神科医療に関する説明

市立小樽病院、および医療センターの医療事情に関して医療者だけでなく、患者、市民、議員、マスコミなどの中には残念ながら正しく理解していない者がいるので、このたびホームページを利用して両病院の診療の特徴および内容について説明した次第です。

 これからの医療は時代の、社会のニーズに促したことを行なわなければならない。また病院も各診療科も目的、役割、分担を明確し、そして他施設と連携を取り合って行かなければならない。自治体病院である市立病院は他の医療機関で出来ない質的水準の診療を行うための施設、設備を有すること、また医療が地域に必要とされる場合には不採算になっても担う責務がある。

 当市立医療センターの精神科は現在医師4名、実稼動病床100床で平均患者数85 名、平均在院日数200日以下(全国250〜300日)である。看護職員は看護師46名(正看44名、准看2名)看護助手11名であり、2交代制で夜勤3名(すべて看護師)体制で勤務している。診療報酬上の看護体制は15:1であるが10:1で実施しなければ適切な看護管理ができない状態である。それは身体症状を有する患者が多く、また重症化する患者、手術など他科の治療を有する患者、緊急入院を必要とする患者など手の掛かる患者が多いからである。それだけ手厚い看護を必要とする一方で経費も多く掛かることになる。

 また当精神科は北大の教育研修病院でもあり、若手の教育や専門分野の診療、研究にも携わっている。これらは長期的にみて採算を考える以上に価値がある。現在道内の自治体病院において精神科は人手不足、不採算面から少なくとも6施設で病床数の大幅削減をしており、さらに2施設で廃止している。それだけ民間の精神病院の果す役割は大きくなる。新市立病院では規模縮小から80床(閉塞 40床、開放40床)に減少することになるが、これから精神科疾患は国民の第5の疾病になること、認知症、児童・小児の精神疾患の治療の要望が多くなることから、当院の精神科では専門家の増員、他科との連携を図る体制をとるなど充実していく、また他施設との連携を図り、小樽、後志の精神科診療の中核的役割を担っていくことになると思う。

 診療の役割分担の1つとして電気けいれん療法がある。本法は重症の器質性うつ病や器質性躁病に対して高い安全性、有効性、そして向精神薬より早い効果発現といった面から優れている。このことは2010年出版の精神科治療学の著書に明記されてある。この電気けいれん療法については2002年の全国自治体病院協議会の精神病院特別部会から提言が出された。本法は従来法(有けいれん性)でなく、可能な限り修正型(無けいれん性)で施行すべきである。これには麻酔医の関与が必要であり、とりわけ単科精神病院における実施は困難であるので、近隣の一般病院との連携を図るなどして、修正型への移行を進める必要があると明記されてある。札幌医大では適応となる患者はすべて(月に3〜4例)麻酔科医の管理のもと無けいれん法が実施されている。

 この2月に近くの精神科病院から医療センターに無けいれん法による治療の依頼があった。この主治医は前任の病院で無けいれん法による経験があったからである。これから本法を用いる治療は患者の安全を考え麻酔科医のいる病院で行なわれるべきである。医学・医療の変化、進歩は目覚ましいものがあり、医療に携わる者は正しい知識と情報に基づいて患者、市民に対し、より良い、安全な医療を提供していくことが求められる。

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