現在の市立病院の重要課題と対策-解決には勇気ある行動が求められる
はじめに
現在の市立病院においては新病院の建築工事が順調に進んでいる。その一方で様々な問題が生じており、その解決には早急かつ適切な対策を立てること、そして勇気ある行動を取ることが求められる。
勇気には自分の実力・存在を知る「気付く勇気」、自分を奮い立たせ押し進める「押す勇気」、苦境に耐える「我慢する勇気」、解決のため一旦退く「引く勇気」、私心を捨て素直に従う「認める勇気」が注目される。
これらの勇気を臨機応変に活用しながら、平成24年度の経営改善、診療活動、運営、組織改革、そして医療機器の購入計画と方針の課題と対策に取り組んできた。その中からいくつかの重要課題を取り上げる。
1.経営改善
1)地域医療連携体制と役割
地域医療連携対策委員会を発足させ、3つの部会を構成し、それぞれの役割を決めた。
1.運営方針検討部会は
a)地域医療連携の国内の状況把握と
b)当院の運営と課題を担当する。
2.実行推進部会は
a)院内業務の明確化及び積極的な院外活動と
b)紹介・逆紹介患者の増加に取り組む。
3.啓発・普及部会は
a)地域の病院、診療所、施設への情報提供を担当する。
2)地域医療支援病院を目指す要件と現状
a.地域医療支援病院を目指す理由:
1.地域病院、診療所からの紹介、逆紹介患者が多くなることで地域の中核病院としての役割を果たす。
2.紹介患者が多くなることで入院患者も増え、診療報酬も増額し、経営的に有利になる。
b.地域医療支援病院の承認要件:
3要件あるが当病院に適用しやすい要件は紹介率60%、逆紹介率30%である。
c.
病床数が300以上の施設要件があるため新病院で承認されることになるが現時点で医療センターは適用要件に近いが樽病は紹介、逆紹介の率を上げる努力が必要である。そのために地域医療連携室の強化を図ることにする。
2.診療活動
1)各診療科の活動状況
a.道内手術数ランキング
1. 北海道新聞社発刊の雑誌「北海道の病院2013」に病院別:手術数ランキングが掲載された。( )内の数値は順位である。脳神経外科手術《脳出血(3)、脳腫瘍(13)、脳梗塞(14)》と泌尿器科手術《膀胱がん(7)、腎がん(13)、前立腺がん(16)》が頑張っている。その他、痔核(7)、ペースメーカー植込み(14)、硝子体(18)、全身麻酔症例(18)、放射線治療(21)であった。
2.今後益々、情報公開が進み、病院、診療科、医師個人の実力、実績が公表され、注目される。
手術症例の増加は二次医療完結を目指す地域中核病院の存在を示し、役割を果たすうえに大切である。
2)救急医療体制と方針
1.小樽・後志地区の救急医療体制は各病院、診療所の医師不足で運営が困難な状況にある。
2.特にこの4月から小樽病院整形外科医の不足、不在の事情により整形外科救急体制が危機的状況に陥る。
3.この状況を樽病の救急担当医、医師会の整形外科部会員、そして小樽市内、周辺の病院の院長、整形外科医で協議し理解と協力を得て何とか対応している。しかし抜本的でないので、市立病院としても早急、適切な対策が求められる。
4.その対策として両病院合同の救急医療対策委員会を発足させ、3つの部会を構成し、それぞれの役割を決めた。
a)運営方針体制検討部会は医師会との連携、
b)実行推進部会は消防本部との連携、
c)救急・災害医療啓発部会は市当局との連携、DMAT・ACLSの担当とする。
5.この7月に夜間急病センターが樽病前に開設されるため、これまで以上に樽病への協力要請が多くなることが予想される。その件に関して樽病内に、救急医療対策ワーキンググループを作り対応を検討する。
6.両病院は自治体病院であり、特に新市立病院においては救急医療の充実は市民からの大きな要望である。従ってその期待に応えられるだけの設備、体制を整える意向である。
7.それまでは現在の輪番制に則り、二次医療患者の対応に当ることが適当である。
3.運営、組織改革
1)事務局の新体制と目標
a.新体制:
両病院の事務室を経営管理部事務局に一本化する。
b.目標:
a)地方財政上の資金不足解消
b)新病院への着実な準備
c)地域連携の推進
d)病院機能の充実
e)職員等の育成・教育である。
c.事務局職員の3つの心構え
目標達成のために3つの心構えを持つ、
a)明るく、素直に前向きな態度で、人間関係を円滑にする。
b)病院組織内のよき潤滑油となって働く。
c)自分の立場、役割を理解し、病院のために勇気を持って行動する。
4.職員に対する提言
1)
両病院の職員間にはまだ病院運営、自分達の役割についての認識に差がみられる。来年の12月から新しい病院で働くことを強く自覚し勇気ある行動をすることである。
2)
私は小樽市立病院の再建のため4年前に就任し、ようやく新病院建築着工まで漕ぎ着けた。調度同じ時期に稲盛和夫氏が崩壊した日本航空の再建に強力なカリスマ性とリーダーシップをもって社員の意識改革、経営再建に懸命に取り組み、3年間で経営を回復させた。
3)
稲盛氏の偉大さに感銘する。稲盛氏は組織人には哲学をもつことが必要である。すなわち社員個々人が会社に対する義務と責任、社会に対する貢献と奉仕をしっかり考えて行動することであると言う、そこで稲盛フィロソフィー集を全社員に配布し、徹底的に指導した。
4)
その時重要視し、活用した「六つの精進」の内容と意味は:
a)「誰にも負けない努力をする」それで仕事が好きになる。
b)「謙虚にして驕らず」それで信頼される。
c)「反省のある毎日を送る」それで目標が明確になる。
d)「生きていることに感謝する」それで喜んで一緒に働ける。
e)「善行、利他行を積む」それで本当の満足、達成感がえられる。
f)「感性的な悩みをしない」それで前向きに活躍できる。
それらを実践することで意識改革が進み道が開かれる。
おわりに
組織は人の集団である。組織は時代の要請によって変化する。組織はその時代で相応しい働きをする人をリーダーとする。組織はそこで働く人の意識、意欲、実力、実績がチームワークの中で良く活かされて発展する。私は病院事業管理として2期目の4年間に市立病院新築、統合、開院、健全経営達成のために力を尽くす責務がある。これからいろいろ困難な場面、試練に出会うことになるが全職員が同じ目的に向って、協力し合って、勇気ある行動をとるなら難関、試練を乗り越えていけると確信する。