最近の野球界の思い出に残る出来事

 平成25年は私にとって野球に関して思い出に残る貴重な出来事に出会う機会に恵まれた。具体的には私の身近では札幌医科大学野球部が創部60周年を迎えたこと、国内では長嶋茂雄と松井秀喜の両氏が国民栄誉賞を受賞したこと、海外ではイチローが4,000本安打を達成したことなどが挙げられる。
 創部60周年記念祝賀会には1期の山本健三郎先生はじめ各期のOBの先生方そして66期の新入現役部員を含め60名を超す人達が集まり、盛大かつ和やかに行なわれた。この時、33期の今井富裕先生の保健医療学部教授および第7代野球部長就任祝いそして野球解説者の白井一幸氏の記念講演が行なわれた。
 野球部OB会は医学医療界だけでなく他の分野においても大いに活躍するものなど多士済済であり、その存在は学内外から注目されている。
 札幌医大の野球部はこれまでに4回程黄金期があり、東日本医科大学準硬式野球大会において強豪校に入っている。野球部の伝統的な特長は明るく、自由闊達な雰囲気で純粋で人の良い集団である。それが弱点となり部活動における切実感、長丁場の練習、試合を乗り切るスタミナ、勝負にこだわる執着心に欠けるところがある。そのため実力を十分に発揮できずにもろく負けたことが幾度かある。
 先日今年度の東医体優勝校の東北大学野球部長に会った時、また3位決定戦で負けた旭川医大野球部OBの学長と話した時に悔しい思いをした。やはり野球は戦でありどのような形であっても勝たねばならないことを痛感した。野球部は60年、人間では還暦を迎えたわけであり原点に戻り、新たな気持で伝統的な弱点を克服しこれからの野球部の強化と、発展に部員一同が最大限力を尽すことを切望する。
 駒大苫小牧高野球部が夏の甲子園連覇を果した時のチームの方針は「やればできる」「言い訳はよそう」「前へ一歩進んでみよう」であった。現役部員はこれを参考にしてほしい。
 白井氏は講演で走ることなど基本的な反復練習を手ぬきする者は伸びないこと、コーチの役割は選手に必要なことを気付かせ、直ちに行動するよう仕向けること、ヤンキースのように強く伝統のあるチームは全選手、球団職員ともに優勝を目標に責任と使命をもって活動、活躍することを強調した。今シーズン日本ハムはパリーグでエラーが最も多く、最下位となった。攻撃、守備の時も全力で走らない選手が目立ちチーム内に緊張感がないことを批判された。稲葉選手は試合で全力疾走できなくなった時は引退する時だと述べた。来シーズンから白井氏が日本ハムにコーチとして入団するのでその立直しを大いに期待する。
 この年私の知る数名の巨星落つがあった。国内では大相撲の大鵬元親方、プロ野球の川上哲治元監督、そして身近では野球部OBで2期の森和郷先生が亡くなられた。
 森先生は義理、人情に厚く面倒見の良いすばらしい人格を有する人物であった。私は森先生から忘れられない言葉を頂いた。それは「若いうちはとにかく診療、学問に懸命に打ち込み、実力、実績を付けることが大切であり、金銭および名誉などは後からついてくる」であった。この教えを私の教室員に日頃伝えてきたことで7名の教授を輩出することができた。
 国民栄誉賞は1977年に本塁打世界記録を達成した王貞治氏を称えるために創設された。その目的は「広く国民に尊敬され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えること」である。長嶋茂雄氏の受賞理由はミスタープロ野球として誰からも愛される国民的スターとして国民に深い感動と社会に明るい夢と希望を与えたことによる。
 松井秀喜氏の受賞理由は日本人初のワールドシリーズMVPの獲得などの数々の素晴らしい成績を残し、ゴジラの愛称で日米の国民から愛され、親しまれ、その活躍は社会に大きな感動と喜びをそして多くの青少年に夢と希望を与えたことによる。この年に没後受賞した大鵬幸喜氏の理由は昭和の大横綱として相撲界に輝かしい功績を残すとともに多くの国民に愛される国民的な英雄として社会に明るい夢と希望と勇気を与えたことによる。1960年代子どもの好きなものとして大鵬、巨人、玉子焼の3つは流行語になるほど国民的人気があった。長嶋、王を育てた川上哲治元巨人監督は現役時代に打撃の神様といわれ、監督になりV9を達成した名監督であり、自他ともに厳格な人であった。彼は選手には運が必要であるが日頃厳しい練習を行い、試合に真剣に取り組んでいるものに運が訪れると述べた。また大鵬元横綱は現役時代相撲の天才と言われることを嫌い、自分は厳しい稽古に耐えることができる天才であるのだと述べた。
 海外でのイチロー選手の活躍は立派である。かつてイチローはメジャーリーグで首位打者を獲得した時とシーズン最多安打を記録した時の2回国民栄誉賞授与の打診があった。その時彼は「自分はまだ現役で発展途上の選手などで出来れば引退した時に頂きたい」と受賞を固辞した。イチローは誰よりも早く球場に来て、入念なトレーニングとマッサージを受けるなど万全な体調で試合に臨んだ。また日常生活での自己管理に人一倍気を使った。野球に対しては自分にも他人にも厳しい考え方と行動をとる。このイチローの態度はマリナーズの時は個人主義的であると批判されたことがあった。彼はヤンキースに入ってチームの勝利のための攻走守の大切さとチームプレーで勝つことのすばらしさを知った。一方松井氏はヤンキースのトーリ監督から一番チームプレーを知りそれに徹する選手であると称賛された。またどのような状況に置かれても常に同じ態度で堂々と行動することからチームメートから信頼、尊敬された。そのことはヤンキースが松井のためにわざわざ引退試合を企画してくれたことからもわかる。
 その他、野茂秀雄氏が大リーグの殿堂入りにノミネートされた。これが正式に決まれば日本人初となり彼のこれまでの努力、苦労が報われる。私は野茂、イチロー、松井の3氏が日本プロ野球界に監督として復活し、日本プロ野球界の発展のために貢献することを夢みている。

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