市立病院における政策医療等について

公立病院は、いわゆる政策医療、不採算医療等を担っており、それに対して一般会計からの繰入がなされています。民間病院でも同じ診療をしているのに、なぜ公立病院は赤字で繰入が必要なのか、両小樽市立病院の実情をふまえまして、お話しさせていただきます。

  まず、いわゆる政策医療の中には、民間医療で行っている診療もあります。

 

(結核医療、感染症医療)

  しかし、結核医療や感染症医療は法律で措置入院や命令入所の制限などがあります。従って普通の医療とは異なるものであり、現在では公立または公的病院が担っております。小樽病院でも現在15の結核病床がありますけれども、これまでの患者動向の分析から新病院では4病床にすることにしております。

 

(救急医療)

  それから、救急医療ですけれども、これは医療職員の多くが必要であり、かつ24時間体制での待機や、空きベッドを確保しておかなければならないなど、不採算の面があります。当市でも行っているように民間病院に対しては、補助金制度があり、それで対応しているところでございます。

  当病院は災害拠点病院でもありますし、二次救急あるいは三次救急の医療に力を入れていきたいと思っております。そのためヘリポート等を含めて、民間では出来ないような設備および体制をつくり、小樽市だけでなく後志全域の安全、満足する医療を提供して参りたいと思っております。

  なぜ、一次救急をしないのかとよく言われます。救急医療には、一次、二次、三次というのがありまして、一次救急では緊急性を要しないもので、ほとんどが入院の必要がない患者であります。それらの患者が二次救急病院に自らの都合で行くため、二次病院でしか対応できない患者の診療に支障をきたすということが、大きな問題になっています。このことは小樽市だけではなくて、苫小牧市でも函館市などでも、問題になり一次救急患者に対応する夜間救病センターを設けて、実施しているところです。

  砂川市、名寄市のように市立病院しか大きな病院のないところでは一次から受けていますが医師、医療者への負担が大きく、問題になっています。新市立病院には救急に関する設備、機器が整備され、人的な面でも麻酔科医が充足しており、緊急手術や重症患者管理(ICU治療)が出来る体制になります。これからは小樽、後志地区の救急、災害の中核病院の役割を担っていくということになります。

 

(精神医療)

  精神医療につきましては、日本では民間病院が多く担っておりますが、外国では国が公立の施設で担っている例が多い医療分野であります。

  精神医療は一般的に入院期間も長く、診療報酬も低いのが現状であります。そこで経営上の利益を求めるため患者を早く帰したりしますと、個人の人権問題や色々な精神的および身体的な問題が起こりやすいと言われております。本市の医療センターでは、精神救急の受け入れを行っております。外来患者さんが何か身体的な症状を持っているような場合には入院させるようにしております。そのため他の施設よりも、施設基準を上回る看護体制で行っております。15対1看護体制は他の民間病院では、人件費が多くかかるため行っていないかと思われます。

  電気ショック治療を無痙攣で行う場合には、麻酔科医のいるところでなければ行えません。医療センターでは本治療を麻酔科管理のもと行っており、また他病院から紹介された患者を入院させ、治療終了後に前病院に帰すことを行っております。

  医療センターで行っている子供の精神医療は診療に時間がかかりますし、採算が合わないため他の病院では行っておりません。しかし、この医療に対しての要望が高いため今後とも行っていくつもりでおります。

  このように精神科医療には不採算的なところがありますが、当医療センターの精神科の先生方はより質の高い医療を行う意欲をもっております。

 

(高度医療)

 高度医療につきましては、近年民間の大きな病院でも高度な医療および検査機器を備えるようになっております。しかしそれはすべて、採算が合うかどうかを第一に考えて機器を入れるわけでありまして、採算が合わないと経営上切実な問題となりますので、公立病院以上のより厳しい決断が強いられます。

  小樽病院では、がんの放射線治療を行っておりますが、これは小樽・後志地区では、ここしか行っておりません。放射線診断および治療は今後ますます専門化、高度化されますので、民間病院では扱わないだろうと思います。

 それから、高度医療および質の高い医療を行うにはどうしても、一つの科だけではできないわけであります。そのため各科の専門的な人達が集まって治療するチーム医療あるいは集学医療が必要になります。

  小樽病院での症例を提示します。婦人科のがんの根治手術をする場合、大きな手術侵襲になり、内臓臓器の損傷や大出血を生じます。血管を損傷したときには、血管外科、腸を損傷した場合は外科、また尿管切断された場合、泌尿器科の先生方に治療に参加してもらう。さらにこのような患者は術後が大変ですのでその場合には重症患者管理に精通している麻酔科の先生に治療に加わってもらうことになります。このような高度な医療体制ができるのは小樽病院しかないわけであります。

  小樽・後志地域の脳、心血管疾患の救急患者が最も多く運ばれるのは医療センターであります。そこでは患者の手術が迅速かつ適切に行える設備面、人的面が整っております。新病院ではヘリポートが設置されますので、二次、三次救急医療体制がより充実されるわけであります。特に、市立病院、協会病院、済生会病院が同じ地域にあることで1つの病院群として安心、信頼、満足を提供できる医療連携を図ることが求められます。

  それから、がん医療ですが、小樽病院はがん拠点病院になろうと今頑張っております。現在がん緩和ケアチームを結成し、診療を行っております。そのチームは患者の苦痛症状をコントロールする治療を行います。その医療を行う場合には、麻酔科医、精神科医、認定の看護師と薬剤師が必要であります。このような医療ができるのは、この小樽・後志地区では小樽病院しかないわけであります。今後この分野の充実、普及に努めて参ります。

 

(リハビリテーション)

 リハビリテーションには、作業療法士、理学療法士を多く配置する回復期リハビリテーションがあります。これは診療報酬も高く請求することができるために注目されています。民間病院では急性期医療では経費が掛かりすぎるので、この回復リハビリテーション、あるいは慢性期医療に移る傾向にあります。最近、函館地区ではそのように実施されています。

  私どもの施設ではリハビリテーションの中で、急性期患者を扱うことにして整形外科患者だけではなく、手術後肺合併症、肺疾患患者に対する肺理学療法などに力を入れていくことにします。

 

(小児医療)

 小児医療につきましては、小児医療および周産期医療は少子化が進んできますので、設備および人的体制が整ったところでやるのが妥当であります。今、小樽・後志地区で地域周産期母子医療センターの役割を担っているのは小樽協会病院だけであります。そこでしっかりやっていただければよろしいと思います。我々は再編ネットワーク化協議会のときに、それぞれの病院の特徴を出しましょうということで、協会病院に小児、周産期医療をお願いする。そのことに対して市さらに利用する自治体から財政的な助成を行ってもらえればよいと思います。

  後志地域で、産科救急がありましたら、市立病院のヘリポートを使うことで短時間で患者さんを運べ大いに役立ちます。私どもがヘリポートを造るのは市立病院のためだけではなくて、協会病院はじめ市内の医療機関にも積極的に利用してもらうことを意図しております。

 

(公的財政措置)

  交付税など公費を受けられるのは私ども自治体病院だけであり、ありがたいことだと思っております。これを小樽・後志地区の医療のために最大限活用していくことが大切であります。その一方で私どもはその優遇策に甘えてはいけないと思っております。両病院の職員には現在、両病院がどういう状況にあるのか、市当局、議会、医師会、マスコミ、市民からどのようなことが要求されているかをしっかり認識して、職員自ら意識改革および目標実現するための実行力を発揮する必要性を事ある毎に伝えております。

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