統合・新築の最終段階を迎えての活動 -気付き、確認、前進の行動が必要-

平成26年7月28日平成26年度第2回拡大経営戦略会議での基調講演の概要を紹介する。

 

1.はじめに:経緯と意義

最近3ヵ月間にヒアリング(市長および各診療科医師、各コメディカル部門職員)、各種会議(両院経運営会議、小樽市立病院経営改革評価委員会、議会の特別委員会、全国病院事業者協議会)、学会、研修会、講演会(第64回日本病院学会、平成26年度全国病院事業者研修会、小樽市商工会議所常議員会、関西および東京小樽会講演会)における活動を通して両病院は確実に統合、新築の最終段階を迎えていることを痛感し、これまで以上に緊張感、責任感、焦燥感に囚われている。

その理由として病院外部者が新旧の小樽市立病院に対する認識、評価に差がみられること、および両病院の職員はこれまでの総論から各論についての検討を行っているが一緒に勤務していない現状から具体的な細部のこと、実際の臨場感がつかめずに不安になっていることが気になるところである。このことを解決するには職員各々がこの問題の重要さに気付き、確認し、前進する、行動をとることが必要である。

 

1)気付き、確認、前進の意味

気付き:現状から自分が求められること、組織が求められることを素直に、謙虚に、公正に知る。

確認:事実を多方面から、客観的に、科学的根拠を示して、評価し、決定する。思い込み、誤解、自分の都合からの主張を避ける。

前進:目的達成のためには個人の権利より、組織の利益を優先させ、同じ方向に向って積極的に行動する。

 

2.両院の課題

1)統合する新病院の形態の種類と行方

(1)1+1=2 

両院がただ2つに結合しただけで表面上の診療活動は行なわれるが活性化と発展性に欠ける。

(2)1+1=1.5

両病院の各々の主張が強く、協調性がなく、患者、職員からの不平、不満がある。

(3)1+1=3

両病院の価値観が一致し、またそれぞれの特長を有効に活用し、連携、協調がよく病院が活性していて働きがいがある。

 

2)現在3つの必要なこと

(1).情報は公開、共有、活用されることが必要である。

(2).公開することで個人、所属する診療科、部門、病院そして地域の実力、実績が明確になる。それを共有することで、改善、努力すべきことがわかる。そして活用することで個人を成長させ、組織を発展させる必要がある。

(3).組織は人なりであり、人材育成が大切であり、そのためには適正、公平に評価される必要がある。

 

3)人材育成と評価:医師に対する評価

(1).診療活動

診療内容、診療実績、診療科と個人の収益、取得資格

(2).学術、教育活動

学会発表、論文掲載、講演・講義、研修指導

(3).病院内活動

委員会活動、会議への参加、病院運営の貢献

(4).病院外活動

学会・研究会や医師会など公的活動、地域、社会貢献

(5).人物評価

業務態度、患者・家族の評価、病院職員や院外医師の評価

これらの項目の内容を総合的に評価し、処遇を考慮する。

 

3.学会、研修会での貴重な情報

1)第64回日本病院学会シンポジウム「組織における人材育成の在り方」

済生会福岡総合病院の岡留健一郎院長は従来聖域とされていた医師、特に臨床各科主任部長クラスの人事考課ともいえる「パフォーマンス・レビュー」と各コメディカル部門と事務職員の職員満足度調査結果を発表した。その要点は

(1).手術例数や紹介率などの数値も勿論需要であるがそれ以上に各医師の病院への貢献度を評価する。

(2).評価項目として行動力、実績、目標達成度からなるが、行動力評価を最も重要視する。

(3).評価内容は(1)部長としてのマネージメント実践(統率力、実行力、指導力)(2)医師としての基本行動(医師間の連携、チーム医療)(3)病院組織人としての基本行動(貢献意識、委員会・会議への参加)より構成する。

(4).これらの分析結果を各医師との面接時に本人に見せ、足らないところを指摘し、またいいところを褒めリーディング(舵取り)する。

(5).職員の組織活性度を構成する六つのカテゴリー((1)組織一体感、(2)仕事のやりがい、(3)誇りと帰属心、(4)コミュニケーション、(5)上司信頼、(6)組織システム)別の分析結果では、部門により上司信頼のスコアが特に低いという結果がえられた。この事から、病院の活性化のためには、真のリーダーの育成を急ぐことが重要である。

 

2)平成26年度全国病院事業管理者研修会

(1)高松市立病院においてはすべての病院局職員に対して病院局宣誓書を提出させる。

その内容は「私は、ここに、地方公務員法第三十条に基づき、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念するとともに、高松市立病院の基本理念である「生きる力を応援します」を実現できるよう、Fine Teamwork精神で業務に当ることを誓います。」である。

また病院が最高の仕事をするためにはすべての病院職員がMission(使命)、Passion(熱意)、Action(行動)をもって行動することを指針とする。

(2)田川市立病院において、職員の全体力向上と一体感の醸成の取り組を実施した。

良い結果を得た理由:

(1)トップ・マネジメントとして経営破たんに対する危機感。

(2)リーダーシップとして病院再生の明確な意思表示、ビジョン、ミッションの明示、中期事業計画の作成と実行、目標管理と評価、医療の向上と経営の向上の表明。

(3)全職員の経営参加、向上心、熱意。

(4)地域文化への貢献:地元行事の積極的参加、市民公開講座、病院開放。

(5)市民・議会、市長をはじめとする本庁、県庁の理解と支援。

(3)新病院紹介の講演タイトルと強調したこと。

(1)講演会場とタイトル

a.小樽市商工会議所常議員会:「小樽市立病院の現状とこれからの地域医療について」

b.関西小樽会:「小樽市立病院建設の進展状況」

c.東京小樽会:「新小樽市立病院の現況」

(2)講演で強調したこと

a.新病院ではヘリポートの設置、ICT(情報通信技術)のID-LINKシステムの導入、最新の医療機器としてハイブリッド血管造影装置、PET-CT装置、放射線治療装置(リニアック)を設備して、がん、脳、心血管、認知症疾患などの診療および健康診断を受けられるようにする。本日の講演会にご出席の会員とご家族の皆様に勧める。

b.患者・家族および一般市民から市立病院新築資金基金の寄付金および寄贈品が寄せられる。平成26年1月10日志村元市長のご遺族から新病院建設のための寄附金の贈呈があった。現在寄附金総額は7千万円を超えた。また高価な壁時計が寄贈された。このような寄附金および寄贈品は大変有難く、職員一同喜んでいる。

(3)関西および東京小樽会会員からの意見と要望

a.これまでの経緯を考えると小樽市立病院の建設がまもなく現実なものとなることに喜びと驚きの気持ちで一杯である。

b.新病院に訪問することを楽しみにしているし、その将来に大いに期待している。

c.国際都市であるのでメディカルツーリズムについてはどうなっているか。

d.こちらの病院、クリニックから紹介されても円滑に診療をうけれるか。

e.外来診療は待ち時間が短く、効率的に行なわれるか。

(4)講演のまとめ

小樽市立病院の役割は最良の急性期医療が行なわれる地域完結型病院になることである。

 当院の責務として以下のことを行うものとする。

a.当院の使命として市民、地域住民の皆さんに信頼される新市立病院にする。

b.地域の中核病院として高度の医療機器、設備を地域の先生方に開放する。

c.当院に地域医療連携システムを置きインターネットを活用して医療機関、施設、将来在宅との連携を図る。

d.当院の施設、設備を医療関係者、患者、市民の医療、福祉の啓発、教育活動に利用する。

e.予防医学にも力をそそぎ国際観光都市小樽を訪れる観光客の検診、診療を行う。

 

4.おわりに:提言

プロゴルファー青木功氏の週刊新潮(7月17日号)記事の超一流の道を拓くにはを紹介する。超一流を目的達成に読み変えると我々の参考になる。

超一流と言われる人は当り前のことを当り前に実行できる継続力を持っている。スポーツでも仕事でも少しでも「誰かにやらされている」という意識を持ったら、もう一歩先の高みには上がれない。上に行ける選手は考える力、感じる力を持っている。また「今の自分がやるべきことは何か」とか「自分の目指すべき場所はどこか」をしっかり見定めている必要がある。この明確なビジョンを持って進むべき道筋をしっかり作っていくことが超一流へ進む第一歩である。どんな世界でも「実力社会」だ。その中で常に上を目指して上がり続けるには、日々の継続力と必要な道筋に沿った行動力が必要だ。そして最後にモノをいうのは自分を信じて、図太く、プラス思考をもつことなのだ。この記事の内容は、統合・新築の最終段階にある我々にとって貴重な提言となる。皆さんには継続力、行動力、プラス思考を発揮して目標達成のために気付き、確認、前進の活動をすることを期待する。

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