小樽市立病院の年末、年始の局長メッセージ

 平成29年の小樽市立病院の仕事納めと職員忘年会の日を迎えた。私はこの1年間に色々な出来事に出会いそして貴重な経験と多くのことを学んだ。その中で特に印象に残った3つの出来事があった。
 まず1つ目は職員の社会人、職業人として感心したことであった。私は日頃病院内を巡回している。その時に多くの職員達から明るい笑顔と元気な声で挨拶、時には激励の言葉を掛けられた。それは相手を喜びと有難い気持ちにするものであり、社会人として立派な行為である。それと職員の働いている後姿を見ると生き生きと、誇りをもっており、職業人として立派な様になっていることに感心した。このような職員達には職場および病院での管理、運営のリーダーとして大いに活躍することを期待する。私が病院の発展のために常々職員達に強調していたことは時代のニーズに即応するように業務の見直しをすること、病院の方針、規則、職場の連絡事項等をしっかり浸透させること、そして伝えたことが実行され、成果を上げているか検証することである。その実践に当り心得ておくことは人は自分の都合の良いように解釈して行動する。従って人を適切に理解するには相手の気持ちを察しながら繰り返し、話を聞いて確認する必要がある。
 2つ目は当院はこの4月から新小樽市立病院改革プランの策定をもとに、20のアクションプランを立て、経営改善作業をスタートした。現在我国の公立病院の約4割が黒字、当院を含め約6割が赤字経営であり、その経営改善を国および自治体が強く求めている。現在当病院には国の交付税を含め市から毎年決められたかなりの運営費負担金や補助金が繰り入れられている。それでも赤字体制であるので、それを5年間かけて解消し黒字化するプランを立て、実行に入ったところである。
 私は新病院になり、黒字化している病院の経営目標や方針を当院にも当てはめて実行してきた。具体的な方針として、病床稼働率を高く維持、新規入院患者を増加させるため手術・集中治療および救急医療体制の見直しと充実、そして小樽市内、周辺からの紹介および逆紹介患者増加のために地域医療連携活動の充実と強化を図る。さらにがん診療連携拠点病院、地域医療支援病院の認定取得を目指すことにした。現在方針実施して3年が経過しその効果がみられてきたがその一方で業務が多忙になり職員の負荷、ストレスも大きくなっているのも事実である。しかし職員達にはこの状況が黒字化になる病院の必要条件だと受け止めて、知恵を出して工夫をし、汗を出して行動し、心を奮ってやる気を出して頑張ることを強く求めている。
 2013年にダイヤモンド誌に9項目の医療機能および4項目の経営状況の13項目から評価した病院ランキングが掲載された。市立小樽病院と医療センターの統合・新築前の病院ランキングは道内71病院を3段階に分けると両病院とも下位グループの上位でした。そこでその評価項目に新病院の平成29年度の数字を当てはめてみると上位グループの下位に相当する結果でした。このことから、新病院には統合・新築効果が見られており、経営状況が良く、活発な運営をしている上位の病院グループに近づいていることがわかり勇気づけられた。さらなる発展のためには明確な理念と基本方針のもと、一致団結して行動し目標を達成することが重要である。当院の理念は患者に信頼される質の高い総合的医療を行う地域基幹病院を目指すことである。それを達成するために必要な心構えはまず情報を公開し、実情をよく理解すること、情報を共有して同じ目的意識を持つこと、そして情報を活用して、同じ方向に向って力を合わせて行動する。そして職員一人一人が周囲と仲良くなるために謙虚になり、自分が活かされるため、信頼されるために、感謝の気持を持ちそして少しでも周囲の人、組織そして社会に役立つために貢献する態度を持つことである。
 さて3つ目は、この1年間に起こった産業界と政治、行政の世界での不祥事であった。その理由は産業界の不正は自分達の勝手な判断、管理体制の甘さ、上層部と現場との意思疎通不足によるものでした。政治家、官僚の悪しき忖度はこれまでの慣例と利権に固執、自分の職場、個人に都合の良いように判断して行なわれた。そして女性都知事は自分の高い人気が自分の真の力によるものとの思い込みと過信から仲間に排除発言をするという高慢な態度を取ったことでした。彼らの共通点は自分の態度、考え方が時代の、社会のニーズ、期待に適合しなくなったことに気付かずに行動を続けたことによって信用を失い制裁を受けた。このことに関する貴重な格言がある。時は偉大な選別機であり、確かなものでなければ躊躇なく淘汰してしまう。それと人は地位を失う、財産を失うより信用を失う方が大きな社会的ダメージを負うことになる。このような不祥事はこれまでの歴史の中でくり返し見られており、人間の弱さ、愚かさを痛感した。従って、明日は我が身であり、自分達もいつ彼らと同様な事態に陥るかわからないことを胆に銘じておくこと、そして適切な忠告、支援をしてくれる人達との良き人間関係、人脈を作っておくことが大切である。小樽市に似鳥美術館を開設した似鳥会長は自分が事業に成功し、社会に貢献できるようになったのは自分の実力3割、運7割である。自分が運に恵まれたのは自分を支援、忠告してくれる良き人達に恵まれたことだと語った。とにかく職員の皆さん達にはこの1年間での努力や苦労によって得られた成果に対して称賛するとともにこの経験を将来の活躍のために大いに生かすことを期待する。
 さて、平成30年の仕事始めに当り職員の皆さん達に強調したいことは病院の現状と課題をよく認識すること、今年の目標を明確に理解すること、その目標達成のために求められる心構えをしっかり自覚して実行すること、そして円滑、円満に実施される仕組み、体制を適切につくり、作動させることである。
 現在病院の最も重要な目標は医療の質を高め、患者、住民に信頼され、大学はじめ医師会など諸団体、市、国などの機関に信用される病院を目指すことである。医療の質を高めることに関しては地域基幹病院に相応しい診療の質を高めること、患者、住民に安心、喜ばれる患者サービス、安全の質を高めること、そして円滑、円満な病院運営のために経営の質を高めることである。この3つの要素の輪がバランスよく、連携を取り合って回転作動することが重要である。しかし現在の厳しい経営状況の中で最優先して取り組まなければならないことは経営の質を高めることである。この医療の質を高めるためにはそれに携わる人材の育成と働きがいのある状況を整えることが大切である。そのために職員の教育と働く環境の質を高めることであり、その要素の輪を3つの輪に加えて4輪駆動車のように活用することである。この車は険しく、厳しい状況下でも力強く、安定感があり、スピーディーに走行することができる。職員の皆さん達にはこの自動車のそれぞれの重要な部品のように病院での自分の立場を弁えて、しっかり役割を果すことである。
 組織の発展にはミッション使命感、パッション情熱、アクション行動力を持った人達が必要である。その人達がお互に尊重、支援、協力し合って同じ目標に向って一致団結して行動することである。当院においてもそのような人達による人間関係が形成されることを願ってきた。その明るい兆しが昨年の忘年会の時に見られ大変嬉しく、頼もしく思った。その会の4つの出し物では出演者達の情熱的で、パワフルでかつエネルギッシュなパフォーマンスがすばらしいチームワークのもとに演じられた。そのパフォーマンスに対して参加者全員が一生懸命に声援を送り、会場内を盛り上げるという勢いのある雰囲気を作り上げたことに感心した。感心した理由はこの年末の忙しい時期にすばらしいパフォーマンスをどうやったら出来るか知恵を出して成し遂げたこと、人に喜ばれる、役立つことを積極的に行ったこと、チームワークの大切さを示したこと、そして同じ目的を持って一致団結して行動する大切さを教えたことでした。
 さて今年の病院の重要な事業として、小樽市立病院が創立90周年を迎えることである。一般社会において組織の寿命はおおよそ30年と言われる。それ以上に生き延びていくには30年毎に組織のあり方、理念を時代の変化に適合するように大きく見直すことが必要である。
 今年90周年を迎えるに当っての私の抱負は時代に求められる、国民から選ばれる、そして未来に挑戦する病院にするために本格的な改革、改善活動に職員一同が真剣に取り組んで行くことである。その一環として病院創設から新病院開院までの歴史的経緯を整理し、これまでの病院の特徴、役割、あり方についてよく認識して、新病院の将来の発展のために役立てることが大切である。小樽市立病院創立90周年記念誌はすでに編集委員会を立ち上げて活動を開始している。また記念祝賀式典についても開催を予定している。この企画が立派に成功するためにも皆さん達の理解と協力が必要である。
 むすびに当病院にとって重要な平成30年度の活動を円滑、円満に乗り切っていくためには、職員の皆さん達がまず第一に日常生活、特に健康面に十分に配慮すること、自分の能力、人格を磨くこと、そして明るく、素直で、前向きな気持ちを持って、困難で苦しい課題を活躍のチャンスとして真摯に受け入れ、果敢に、忍耐強くチャレンジして、事態を良い方向にチェンジさせるように尽力すること、さらに当病院の地域における立場、役割をしっかり理解して、小樽・後志地区の医療機関、医師会と良き連携、協働作業に心掛けることである。職員皆さん達の健闘と成長、そして新病院の発展と明るい将来を心より願っている。

 

 

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