新市立病院の開院を迎えて為すべきこと

はじめに

 時の流れは速く、厳しく、妥協のないものである。万物(人、建物)は時の流れの中に生かされている。時の流れ(時代)のニーズに合ったものだけ生き残り、合わなくなると、その役割を果したものとして無情にも世の中から淘汰される。

 市立小樽病院、小樽市立脳・循環器・こころの医療センターそして市立量徳小学校はこれまでその役割を立派に果してきた。しかし現在はその役割も終り閉院、閉校となり、3つが1つに融合して新病院として新たな時の流れの中でそのニーズに合った役割を果していくことになる。新市立病院の開院を目前にして為すべきことは新旧両病院の円滑、円満な移行を図ることである。

 1.両病院の現状の把握と課題に取り組む

1)第13回全国自治体病院事業管理者・事務責任者会議:

 平成26年8月27・28日に鹿児島市で開催された。事務職員5名は全国自治体病院と当病院の現状を学んだ。また次年度に会議が小樽市で開催されるのでその視察を兼ねた。

(1).病院事業管理者の発言内容:

 全国各地から参加した8名の病院事業管理者が発表し、討論が熱心に行なわれた。

その要点は:

  1. 医師、看護師の確保に苦労している。特に地方では深刻である。
  2. 経営状況は医師数と比例してよくなる。医師数の増員で医療収入が増加し、人件費率が低下する。
  3. 医師の勤務状況、待遇の改善を図り、確保に努める。
  4. 医師はじめ職員の業績、人事評価を採用し、その結果を給与、手当等に充てる試みを行う。
  5. 医師の業務負担を軽減するため看護師、助手、メディカルクラークなどを活用する。
  6. チーム医療を重視し、推進する。
  7. 院外の医療施設との連携を密にし、紹介、逆紹介を積極的に行う。
  8. 職員達に院内、院外の研修、発表を積極的に勧めモチベーションを高め、病院の活性化を図る。
  9. 病院の行事に住民を招く、一方地域の行事に積極的に参加する。
  10. 病院設置者(市長など)との関係は経営実績、医療の見識力、行政、政治力と個人的な信頼関係によって左右される。

2)小樽市立病院経営改革評価委員会:

 平成21年から始まった小樽市立病院改革プランも5年が経ち本委員会の役割が終えた。最終年である平成25年度プラン進捗状況結果の主たる財務指標は目標未達成であり、病院経営に問題が残った。

(1).外部評価委員会の評価と提言:

  1. 平成25年度は医業収益減少、患者数の減少が止まらず、依然、高費用体質を解消できずにいる。
  2. 道内他市立病院との財務指標、職員配置数の比較から、小樽市立病院での本当の改革は未だ始まっていない感がある。
  3. 平成26年に新病院が開設されたとしてこの体質を持ち越すのでは収益の確保は難しい。

(2).改善対策としての5項目の提言:

  1. 組織形態上の問題として例えば独立行政法人化、定員管理なども視野に入れた改革を検討する。
  2. 医療経営を担う専門の中間管理者層の欠如を指摘できる。業務改革の担い手となる職員の採用を実現するために、専門の医療事務職員の採用の拡充をする。
  3. 医療法人経営者や医療機関を所有する企業経営者等を外部理事として委嘱するなど、経営改革の助言を常に受け入れる体制にする。
  4. 新病院におかれては当面、職員給与比率の改善(人件費削減)と病床利用率向上(収益増)の2点の改善が収益増に直結する短期的最重要項目である。
  5. 将来とも持続可能な新病院経営が実現できるかどうかはこの改革が病院局の強固な方針となり職員一体で意識改革し、どこまで実行できるかによる。

3)外部評価委員会に対する見解:

(1).本委員会の7名のメンバーはそれぞれの立場から小樽市立病院の経営状況について厳しい、貴重な本音の意見を述べ、評価した。このことに感謝する。

当方の見解:

  1. 我々の評価と差がみられたのは現場の見解と資料のみの判断による。
  2. 指摘された評価を改善するには統合・新築の新病院で意識を新たにして頑張るしかないことが明確であった。

(2).本会議に参加した戦略会議のメンバーはそれぞれの立場で当病院の経営、医療が外部からどのように評価されているかを知ることができた。

その結果:

  1. 自分達の実力、役割、意識を客観的に知った。
  2. その聴いた内容を各部署の全員に正しく伝え、改善すべき点をすみやかに実行し、その成果を確認することの大切さを知った。

(3).委員会は医療機能面で努力していることを評価するが財務面において、数字として明らかな改善がみられないことから評価を低くした。これはプロの世界では当然なことである。

その理由:

  1. プロの医療者としていくら一生懸命に仕事をしてもそれが結果として相手から評価されなければ仕事をしたことにならない。
  2. 第3者から高い評価を受け、その成果を個人および病院のさらなる発展のために活用する。そこにプロの医療者としての喜び、生き甲斐がある。

 

2.市民、市民団体からの要望に応える

1)新病院の講演会、見学会の実施:

(1).最近の3ヵ月の講演会:

日付け、講演タイトル、会合名は

  1. 8月12日: 小樽市立病院建設の進展状況、小樽中央ライオンズクラブ例会
  2. 9月8日:新市立病院建設の紹介、小樽市立量徳小学校校友会総会、
  3. 10月4日:新市立病院最先端の医療機器と設備、両市立病院合同市民講座、
  4. 11月25日: 新小樽病院の経緯と展望、
  5. 小樽ロータリークラブ例会、
  6. 11月29日:新市立病院の開院を迎えて、三師会総会であった。参加者には新病院の最新の医療機器を活用しての診断、治療、検診を受けることを勧めた。       

(2).最近の3ヵ月の行事日程:

  1. 9月5日: 小樽市立病院統合新築工事定礎式、
  2. 9月10日:小樽市立病院統合新築工事竣工式と医療機器・システム搬入開始、
  3. 9月11日:ライオンズクラブ寄贈の大型置時計除幕式、
  4. 10月22日: 量徳小学校校友会寄贈記念植樹式と量徳小学校メモリアルガーデン開園式、
  5. 10月25・26日:小樽市立病院見学会。
  6. 11月中に設備、医療機器の最終点検・調整の実施を行った。
  7. 11月1・15日:移転総合リハーサル、
  8. 11月19日:ヘリコプターの離着訓練、
  9. 12月1日:小樽市立病院開院式を施行した。

 

 

3.新病院建設の意義を知る

1)病院局に求められる対応:

(1).これから医療状況の急変に適切、迅速に対応できる新病院の病院局の組織体制の構築が急務である。

(2).新病院における各診療科・部門の組織体制および各種委員会活動が円滑、活発に実施できるよう人事および運営面で配慮する。

(3).新病院における事務組織体制:

  1. 経営管理部を事務部とし、事務部長の指揮のもとスピーディーに対応する。
  2. 管理課を経営企画課とし、院内外の医療状況、情報及び、社会情勢を収集し、企画の立案と実行を行う。
  3. プロパー職員の採用を増し、彼らに責任のある立場での任務を推進する。
  4. 市から派遣の事務職員には病院職員としての心得、知識、手技を習得してもらうため積極的に見学、研修、発表の機会を与える。
  5. 開院式(平成26年12月1日)、落成式典・祝賀会(平成27年1月31日)、第14回全国病院事業管理者・事務責任者会議(平成27年8月27・28日)の開催準備に備える。

2)建設企業の内実と経済効果:

(1)5共同企業体の内実は請負額91億8千万円、延べ時間86万時間、延べ人数10万8千人、延べ下請業者数880社と大事業であった。

(2)地元活用は工事関係および飲食等含めた費用額44億8千万円、下請け業者数60社

であった。小樽経済に大いに貢献した。

3)新病院で働く心構えを予め持つこと: 

(1).2つの病院が統合されたのでなく、1つの新しく建設された病院の職員として働く。

(2).従ってこれまでのそれぞれの病院の決まり、風習、既得権を主張するのでなく、新病院の理念、基本方針に従って活動する。

(3).新しいブドウ酒は新しい皮袋に盛るという格言がある。新しい皮袋に古いブドウ酒を盛ると勝手に発酵して皮袋が裂けるからである。新しいブドウ酒(新職員)として早く新しい皮袋(新病院)に馴染む心構えを持つ。

(4).実際に働くと不都合、不合理、不満、不安などが生じてくる。その解消には現状に悲観的にならずにいま、ここで集中して働く。

(5).大人は和して同せずである。人は自分の都合の良いように考え、行動する。半分も理解してもらえれば良いと考えて、歩み寄る。

おわりに 

 今回病院建設に携った共同企業体には莫大な経費、人的労力と作業時間を掛けて無事に立派な病院を建設して下さったことに深く感謝と敬意を表する。市民、医療施設のほとんどの人達は新病院の医療に対して大きな期待と多くの要望をもって開院を楽しみに待っている。その期待と要望に応えるのが新病院職員の果すべき責務である。しかし現在の病院の実力、実績ではその責務に応えるのに、大きなギャップのあることを痛感する。このギャップを乗り越えるためには職員個々人が医療の質の向上、信頼、安心される患者対応、チーム医療の推進を目指して最大限努力する心構えをしっかり持つこと、その目標達成のために一致団結して励まし、協力し合って行動することである。それは苦難の道であるがあきらめずに果敢に挑戦し続けることで道は開けるものと確信する。       

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