新病院の体制作りと人材育成の準備に取り組む

(平成24年3月の拡大経営戦略会議 基調講演)

 平成23年度最後の第4回拡大経営戦略会議を開催するに当り一言挨拶と基調講演をさせて頂きます。

 この度、鈴木院長、川俣副院長、板垣看護部長、今井放射線科技師長、小路検査科技師長が目出度く定年退職されます。これまでの5名の皆さんの両病院における苦労と貢献に心から謝意と敬意を表します。私は昭和51年(1976年)に小樽病院の麻酔科開設に赴任しました。私の若き日のことを知っている方々がこれをもってすべて退職されることになり、寂しくなると同時に時代の流れを感じます。

 このように時代は絶えず動いている、世間も動いている、従って個人も動かなければならないわけであります。

 私は小樽市病院事業管理者として3年が経ち「石の上にも3年」のたとえのごとく、ようやく市立病院の統合・新築に目途がつき、この3月末から量徳小学校の解体工事が始まります。先日この量徳小学校の児童会より小樽病院に四輪歩行器の贈呈がありました。子供達が新病院建設に対する思いを示されたことは大変嬉しいことでした。このプレゼントは今年になり私に喜びと勇気を与えてくれた2つのうちの1つであります。

 一方、皆さんもご存知の通り新病院建築の発注に手を上げていた2共同企業体は談合問題の新聞報道が出された翌日に彼らの予定価格より10億円以上高いとのことで受注することを断念するという通知を当方にしてきました。これまで2共同企業体より価格の問題に対する問合わせがなかったことから驚き、困惑致しました。新市立病院建設にはこれまでも何かとケチが付いたということもあり不安で嫌な気持になりました。

 またある先生から小樽では鍬が入るまで何が起こるかわからないので、簡単に信用できないという言葉を言われたことを思い出しました。平成25年度末までに完成しなければ8億円の耐震化補助金の交付が受けられなくなりますし、なんといっても26年夏の開院が困難になります。

 従って早急に設計会社に価格の妥当性を調べさせることにしました。この結果適正であるとの調査報告をえたことにより発注、入札条件を緩和することで多くの企業体が参加しやすくすることを考えました。この考えを市当局、各会派の市議会員に説明し、了解をえる作業を現在誠心誠意行い何とか6月までに発注、入札を完了し企業体が決まるように最大限尽力しているところであります。これが達成されなければ職員だけでなく、患者、市民の期待を裏切ることになり、私の病院事業管理者としての責任を負わなければならないと覚悟しております。

 しかし、皆さんはどうか新病院が予定通り建設されるものだと信じて頂きたい。そして新病院に向けての体制作りと人材育成の準備に本格的に取り組むことに理解と協力を是非お願いするところであります。

 平成24年度は先程の5名の他4名の役職の人が退職になり、さらに26年の新病院開院までに退職者がかなり出ることが予想されます。しかしこの事態を逆にチャンスととらえ、人事の若返り、人材育成に力を入れるための組織体制作りを今からしっかり行う必要があります。今回各部門の新たな責任者および体制については退職される方の意見、要望を尊重して取り入れることにしました。

 しかし4月から実際運営された時の状況をみて適切に改善していくことに致します。大きな人事として小樽病院の責任者として近藤副院長が院長代行になり、外科の権藤先生が副院長、越前谷先生と新しく赴任する内科の後藤先生が診療部長となります。両病院合同委員会は9つ設置されておりますが、その活発化を図ることによって、新病院への体制の移行が円滑に行なわれることになります。この合同委員会の運営には経営管理部が深く関わるようにし、また新しく病院局理事を2名置き、局長を補佐することにします。機能評価検討・推進委員会の委員長は久米田副院長、医療材料購入改善委員会の委員長には田宮副院長が担当し、両名は理事として戦略会議に参加する。また拡大戦略会議には各診療科の事情を反映させるため両病院の診療部長を参加させることにします。各部門の統合を進めてきております。

 これまで統合したのは診療科の麻酔科のみでありますがこの4月から検査科が中技師長を病院局経営管理部副参事として両病院の統合に向けてまとめていくことになります。他の部門について当分はこれまで通りであるが部門内での話し合で統合が可能になるなど新しい活動の方針の決定があれば直ちに対応します。なお平成25年度までには統合に向けての明確な見直しと新しい部門の活動方針を呈示してもらうことにします。

 ここで各部門および各委員会のリーダーの人達に要望することは権限と権力の違いを理解して運営に当ってほしいということであります。リーダーには権限と責任が与えられ組織のために働いてもらうことになりますが権力すなわち決定権、人事権といった特権は与えられていないということです。権力は時には公私混同を招きやすく、組織で働く人達が働きづらいことがままみられます。リーダーは教育者としての役割があります。教育とはお互いの人間関係作りであり、信頼と尊敬の関係がえられるようにすることが大切であります。周囲の者たちからの評価の低いリーダーの特徴はまず現場でよく働かない、次に何か事態が生じた時に迅速、適切に対応できず、責任のがれをする、そして自分の都合を押し付けるという共通点を持っております。このような特徴をもつリーダーが出ないような雰囲気と体制作りが必要になります。

 先日新病院での医療機器、備品の購入や病院移転の手伝いをする医療コンサルト会社(医療開発研究所)が決定しました。新規医療機器購入額は約28億円であるが、これを病院の医療の質の高く、高度の医療を行っていくために最大限活用することが重要です。しかし各診療科、各部門の要望をそのまま受けると簡単に不足してしまうためそれを第3者のプロの目から見て調整するために医療コンサルト会社を入れることにした次第であります。

 ここで大切なことは医療機器が新病院の医療レベルにおける必要性、経済性そしてアフターサービスをしっかり考えて、根拠にもとづいた資料、情報のもとに検討することにします。個人的なこのみや、おねだり的要求には応じないことにします。購入検討に関しては馬渕院長が委員長、近藤院長代行を副委員長とした医療機器選定委員会で医療コンサルタントも入れて行うこととし、最終決定は戦略会議で行うことにします。

 なお医療機器新規購入に当っては院外だけでなく院内から厳しい目が光っていることを知り、誤解されないように慎重に対応することが必要です。4月1日付病院局組織機構図を皆様のお手元に配布しております。4月2日に辞令交付式を行います。それと現在病院局管理運営組織図の作成を行なっております。各種委員会の委員長の内諾をえておりますがどうしても出来ない方は申し出て下さい。各委員長は前年度のメンバーを考慮して新メンバーを構成して下さい。なるべく特定の方に負担がかからぬように配慮をお願いします。最終調整は合同委員会は戦略会議で両病院の委員会は調整会議、幹部会議で行います。23年度はDPC委員会に力を注ぎました。

 この3月現在の DPC対象病院は1,505病院であり当病院は4月から対象病院になります。両病院の係数は小樽病院1.31530、センター1.35250と道内の自治体病院の平均より高い値をえており、両病院合わせると最低約8千万円の増収が期待できます。24年度はこれまでいろいろな事情をつけられ、先延ばしにされ、活動が滞っていた機能評価検討・推進委員会の活動に力を注ぎます。

 この3月に日本における機能評価認定病院は2,437病院があります。DPC対象病院と機能評価認定病院の取得が他の自治体病院に比べいかに遅れているか明らかであります。これからは自分達の病院を客観的に評価し、他の病院との評価をすることで改善・改革を図っていくことが絶対に必要であるということを皆さんは認識し、前向きに積極的な行動をとることを切に希望します。機能評価検討・推進委員会は、今年度中にも両病院の申請書を作成し審査を受けることと、新病院での審査が迅速、円滑に行くための必要な準備をするという2 つの目標をもって活動することをお願いします。

 成長のない個人、組織に共通していることは考えや行動が内向きで前例や規則にしばられ言い訳が多く、また責任をとらないように先送りすることであります。この考えることと行動することを通して、人および組織は4つのタイプに分けられます。

 1つ目は考えるが行動しない、これは評論家、先送りをする者にみられます。

 2つ目は行動するが考えない、これは未熟者やお調子者にみられます。

 3つ目は行動しながら考える。これは若いまたは初期段階のため、経験しながら学ぶ人や組織にみられます。

 4つ目は考えながら行動する。これは成長する人、発展する組織にみられます。

 小樽市立病院は3つ目のタイプであり、これまで本来力があるのにその力を出しきっていない状態にある眠れる獅子であったと思います。最近ようやく外部からの厳しい評価を気にするようになり、また外部の刺激を求めるようになり自分達を客観的に見てそして改善すべき点に取りかかるように努力する姿勢がよくみられます。このように眠れる獅子が目覚めてきており新病院になったときには4つ目のタイプとなり、堂々とした獅子として周囲から高く評価されるものになると大いに期待できると思います。

 今年、嬉しく勇気付けられた2つのプレゼントのもう1つは1月31日の私の誕生日に冠動脈基幹部の90%狭窄という危険な状態であったのを循環器内科と外科そして麻酔科の見事なチームプレーと樋上教授の見事な手技により手術が成功し、現在順調に回復しております。心疾患の心配がなくなりましたので老骨にむち打って、新病院統合・新築が成就するように最大限力を尽す所存であります。

 強い組織では同じ目標に向ってみんなで力を合わせ支えあって進むといわれます。両病院の組織においてもそれが期待できます。

 おわりにみなさんにお願いがあります。それはこの4月から樽病に8名、センターに2名、10名の新しい先生方が勤務します。彼らが日常業務に1日でも早くなれるよう指導、協力されることを宜しくお願い致します。これで基調講演を終ります。ご静聴ありがとうございました。

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