古希を迎えて思うこと

 私は今年で70歳になり古希を迎える。
年月の経つ速さに驚かされる一方で時代の激流の中で揉まれ、育てられ、生かされて貴重な知識や経験を多く積んできたことを感慨深く思う。
 現在医学・医療界では私のように責任のある立場で仕事をしている者が結構多くいる。
この70才前後5年間の心(精神力)技(脳力)体(身体力)の変化は私の人生活動に大きな影響を与える。
 2年前にA-Cバイパス手術と前立腺放射線治療を受けたことと年齢的変化も加わり、私の身体的機能が低下したことはかなりのショックであった。それまでは交差点で青信号が点滅した時でも楽々と走って渡っていた。それがダッシュ力がなく、スピードを出して走れず、スタミナもなくなった。この身体的機能低下によって私の心技体のバランスが崩れた感じがした。その回復を幸いにも最近主治医の指導と健康管理に努めることで体調は回復する。
 さて還暦(60歳)から古希までの10年間に教授、病院長、日本麻酔科学会理事長そして小樽市病院事業管理者として組織を運営し、人を管理してきた。その経験のなかで3つの重要な教訓を得た。
1つ目は大きな事業や人事の決定、運営を成功させるには1人では何もできないことである。
 上杉謙信公は戦に勝つには天の時、地の利、人の和のすべてが揃わなければならないと言った。
 徳川家康公は江戸幕府の体制確立に32年間携わってきた経験から自分1人では何もできないことが分かった。
 そして支えてもらう家来には惚れさせることである。それは単に好かれようと気を使うのでなく信頼、尊敬されるように絶えず自分を磨く努力が大切であると述べた。2つ目は人は世の中、周囲の人達から生かされていることである。
教授前半時期は自ら1歩前に踏み出して生きることを心掛けた。
一方後半では教室員と共に1歩踏み出してそれぞれ信頼と尊敬をもってチームワークを良くする方針に変えた。これによりお互いが生かされ、教室の業績を上げることができた。
 プロ野球楽天のエースの田中将大投手は勝利を挙げたときに必ず守備の選手たちの好守に助けられたことの感謝を述べた。
 3つ目は社会、組織を円滑に運営し成長させるには良い人間関係を築くことである。人間関係とは教育、人材育成、人脈作りである。
 教育がしっかり行われている組織には人が集まるし、そこの出身者は信頼され高い評価を受ける。
 今年は3名の臨床研修医定員枠に7名の希望者がおり当院の人気の高いことを素直に喜ぶ。
 当方の切なる願いは各診療科の医師確保である。新病院では質の高い最良の医療ができる機器を揃える。
 また大学の教室と診療、研究、教育面で十分に連携できる体制を整える。
それで多くの診療科の医師が実力、実績を上げることが期待できる。我々は日常業務および生活していくうえに「運、縁、生」を十分に認識して活動することである。
「運」は人あるいは物事とのめぐり合わせである。
運も実力のうちである。その運を活かして発展させていく姿勢が大切である。
「縁」は人と人との間がらと結びつきである。縁と相性は深い関係がある。
日頃から良い縁、良い相性がえられるよう心掛けが大切である。
「生」では生命、生きがい、生活の意味をよく理解する。すなわち人の生きがいのなかで最も大切な点は自分の仕事に惚れ込んで一生懸命に働き、その結果が人のため、組織のために役立つことにある。生き生き活動するにはダラリ活動をなくする。すなわち無駄(ムダ)をなくし効率的、斑(ムラ)をなくし集中的、無理(ムリ)をなくし合理的に活動する。
 古希からの活動は余裕をもって仕事に取り組み、仕事の優先順位を決め、仕事の選択と集中の実行が大切である。
 昭和の高橋是清氏は70歳を過ぎて4回も大蔵大臣の指名を受けた。
その時彼は1歩後退して客観的に考え、国のためになると判断した場合に引き受け2歩前進する精力的な働きで財政危機を乗り越えた。
 人が選ばれる時は皆から推薦されてなるが退く時は自分で決断しなければならない。
その時「天を知る」「地を知る」「吾を知る」ことで適正な判断をする。
これから与えられた任期、職務を覚悟と責任をもって全うするつもりである。

このページの先頭へもどるicPagetop

À メニュー
トップへ戻るボタン