両病院の差し迫った事態の打開を図る - 職員の覚悟と責任が必要 -

 平成25年10月28日に開催された平成25年度第3回拡大戦略会議での基調講演の概要について述べる。

 はじめに、両病院の統合完了まであと1年と期日の差し迫る事態のなかで、解決すべき課題に適切に対応し、作業を順調に進めなければ円滑な開院ができない状況に陥る。さらに新病院の運営にも重大な支障をきたすことが危惧される。その打開を図るには職員の覚悟と責任が必要である。

 

1.覚悟と責任の意味すること

1)覚悟をもつとは

a.厳しい現状を客観的に、冷静に直視する。

b.外部からの評価や情報を謙虚に、素直に、前向きに受け入れる。

c.自分の果すべき仕事、任務に最大限尽す。

d.病院、組織全体のことをよく考えて活動することである。

2)責任をもつとは

a.自分の言動、b.自分の立場、役割、c.自分の出した結果、d.自分を取り巻く人間関係に対することである。

 

2.平成24年度外部評価委員会の評価と提言

(1)改革プランの改革、改善の目標評価が甘く、達成の速度が遅い。

(2)経営収支、特に医業収益の状況が悪い。

(3)入院患者数が減少しており、病床利用率が低い。

(4)人件費比率が道内の市立病院のなかで最も高く、看護師をはじめコメディカル、事務系職員の人員の調整が必要である。

(5)医師数が少なく、維持確保が急務である。

(6)職員の公務員としての権利、各部門での勤務条件の既得権にとらわれずに状況に即応した経営方針、人事配置を行うべきである。

(7)病院上層部の方針、指示が病院末端の職員まで浸透していない。各部門毎での職員として何を必要とされているか、なすべきかを教育する勉強会を開催すべきである。

(8)病院経営は国および市からの繰入金に大きく依存している。

(9)病院経営には民間的発想による活動が必要である。

 

3.民間的発想の病院経営とは 

(1)病院の経営が良くなること、病院の存続することを最優先に考慮して活動する。

(2)業務内容を常に見直し、縦割りでなく、お互いの仕事を補い合うやり方で行う。

(3)患者に対して最良の医療とサービスの提供を心掛ける。

(4)退院患者のフローアップ体制をしっかり行って、患者の安心、満足度を高め、患者のリピーターを図る。電話などで退院患者対応を行う。

(5)医師はじめ診療部門の診療実績を公開し、実績に応じた待遇を行う。

(6)良い医療を行う、また働きやすい医療環境にするためには良い経営状態でなければならないことを十分に認識する。

(7)質の高い、信頼される医療を行うためには病院を大いに活用してもらう。地域の医療機関、診療所および大学との連携を密接にする。また患者、住民への啓発活動などに尽す。

 

4.平成25年度の両病院の差し迫った課題と対応

平成25年度の病院経営収支の不足分および新病院の医療機器(28億円)、情報システム(4億円)購入の予算超過分の両方を財政状況厳しい市からの繰入金で当然のように補充してもらうことは市当局だけでなく、議会、医師会はじめ市民からも厳しい評価、批判を受ける。この課題を切実に受け止め、真剣に対応する覚悟と責任をもつことが重要である。

その具体的な課題と対応について述べる。

1)この上半期(4月~9月)の状況については、平成25年度の入院収益の目標は、両院とも平成23年度の患者数に平成24年度の単価を乗じたものをベースに、小樽病院では整形外科の不足分をカバーすること、医療センターでは、平成23年度と同程度の収入を確保するように設定した。

2)しかし、上半期の実績は、小樽病院では、目標額14億円に対し実績は11億5千万円で、達成率は82%、平成24年度と比べても9千万円減額となった。そのうち、同時期の整形外科の影響が約1億4千万円あったので、約5千万円程度は、他の診療科でカバーしている。当初から高い目標であったが、外科・形成外科・眼科など常勤医が増員された診療科では前年収益を上回っているので、引き続き努力する。

3)医療センターでは、目標額11億9千万円に対し実績は10億9千万円で、達成率91%、平成24年度と比べると約7千万円減額となっているが、11月から脳神経外科と心臓血管外科に常勤医がそれぞれ1名増えるので、今後に期待する。

4)平成25年度の地方財政法上の負債分657百万円を市として解消しなければ新病院建設に関する起債の許可がえられなくなる。このうち、186百万円は病院局の努力で解消する必要がある。

5)その不許可を避けるには平成25年度の資金収支の目標値を達成する必要がある。そのためには下半期における入外患者の積極的増加を図る、診療単価を高める、診療報酬制度を最大限活用する。その一方で人的、物的にも効率的運営、経費の削減を意識的に行う。

6)この危機的経営状況を乗り越えるために、下半期にむけて、診療科長および医療部長面談を行い、新たな目標について相談する。

7)医療機器、情報システム購入の条件と要望について

(1)総額(32億円)以内にすることを必ず守る。

(2)その範囲内であれば現場の要望を尊重する。

(3)選択に当っては患者の安全、病院の収益、新病院の方針、機器価格、性能を考慮して購入の採否および購入時期の優先順位を決める。

(4)購入に関して各診療科と部門の職員は病院全体の状況をよく理解して行動する。一時的に我慢する大人の対応が必要である。

 

5.両病院の職員にとって大切な心掛け

1)ダラリ行動を追放すること。

a.ムダ(無駄)のない行動は効率的である。

b.ムラ(斑)のない行動は集中的である。

c.ムリ(無理)のない行動は合理的である。すなわち効率的、集中的、合理的な行動をすることである。

2)自分の能力を信じ、活用し、組織に貢献すること。 

 人間の能力についてある経営者は「たいていの人間は持てる能力の50%~60%しか使っていない。70%も発揮されれば御の字である。一般に成果が出ないという社員は能力の30~40%しか生かされていないのであって決して無能ではない。上司は使われていない能力の10%を引き出すようにしてあげればよいのです。」と語った。このことから病院職員一人一人が自分の能力をさらに10%高める頑張りと病院の上層部が働きやすい環境づくりをすることで病院全体の実力、実績を大いに上げることが期待できる。

3)組織の改革時には目標の明確化、運営の透明化、円滑な人間関係が大切であること。

最近不祥事のあった2つの会社から学ぶ。

(1)国鉄の分割民営化で出来たJR北海道は事故、トラブルが多発した。

その理由は

a.赤字経営のため鉄道本来の事業より、ホテル経営など他分野の事業に力を注いた。

b.リストラで人員不足、年齢構成不均衡で指導体制が不十分であった。

c.上司からの指示および現場からの要請などの連携が適切に行なわれていなかった。

(2)3銀行の合併によるみずほ銀行は暴力団への融資を行う不祥事件を起こした。

その理由は

a.銀行内では旧銀行3つの縦わりで仕事が行なわれていた。

b.3旧銀行の不都合な情報は共有化されなかった。

c.経営者には現時点の厳しい銀行業務に対する認識が甘かった。

新病院においてはこれまでの両病院の慣例に拘わることなく、新理念、基本方針に則って、モチベーション、コミュニケーション、チームワークを重視して活動することが大切である。

 

おわりに 

 両病院はこれまで患者、家族および市民そして大学、医療関係者等から厳しい評価を受けてきた。しかし、その評価、評判は必ずしも正当なものではなく、時に誤解を招くこともあった。このような事態を打開し、信頼される、高い評価を受ける病院にする最後のチャンスがこの市立病院統合・新築である。そのチャンスを確実にし、発展させるには職員、病院の実力、実績を「倍返し」に発揮することである。それを達成させるには入念な準備が必要であり、それを開始するのは「今でしょう」ということになる。

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